vol.6 世田谷区

2015年に世田谷区・渋谷区が同性パートナーシップ制度を開始したことは大変話題になりました。
これが大きなきっかけとなり、日本でのLGBTの注目度が急上昇し、同性パートナーシップを導入する自治体が増え、LGBTに配慮しようとするLGBTフレンドリー企業も急増しました。
今回は世田谷区の同性パートナーシップ制度の導入から運用に携わっている、世田谷区、生活文化部人権・男女共同参画担当課長の若林一夫さんに、導入のきっかけや運用する上で感じることについてお話を伺いました!

なぜLGBTの支援を始めたのでしょうか?

LGBTの支援、特にパートナーシップ宣誓の取り組みを始めたきっかけは、当事者の方々から「地域社会の一員として、自分たちの存在を認めてほしい」という要望があったことが大きいと思います。

LGBT当事者は日本の人口の3~7%とも言われており、5%で計算すると世田谷区にはおよそ45,000人ほどになります。ただ、現状ではカミングアウトしたくてもできない方も多いと考えられるため、存在がはっきりわからず、当事者の方々からすれば存在を認めてられていないと感じられているのではないかと考えられます。また、偏見を持たれることや、差別的な扱いをされることも少なくありません。

世田谷区では、基本計画において多様性の尊重を掲げ、女性や子ども、高齢者、障害者、外国人、性的マイノリティなどを理由に差別されることなく、多様性を認め合い、人権への理解を深めるため、人権意識の啓発や理解の促進をしています。

そのような経緯から、LGBT当事者の方々の人権を尊重するための施策のひとつとして、区が同性カップルの気持ちを受け止める同性パートナーシップ宣誓の取組みを始めました。

世田谷区の同性パートナーシップ宣誓はどのようなものでしょうか?

世田谷区でいう同性カップルとは、互いをその人生のパートナーとして、生活を共にしているかまたは共にすることを約した性を同じくする二人のことです。
パートナーシップの宣誓とは、二人が同性カップルであることを区長に対して宣誓することをいいます。区は受け取った宣誓書に受領印を押して、その宣誓書の写しとパートナーシップ宣誓書受領証を同性カップルにお渡しします。

宣誓を希望される方には事前にご連絡を頂き、宣誓日の予約を取っていただきます。やはり周りの目が気になるという方も多いので、宣誓当日は会議室などで、宣誓していただきます。時間は概ね30分ほどかかります。2015年11月からこれまでに48組の宣誓がありました(2017年3月末時点)。

▼世田谷区の同性パートナーシップ宣誓の要件

次の(1)(2)に該当する同性カップルの方が宣誓を行うことができます。

(1)二人とも20歳以上であること。
(2)二人が区内に在住であること。または、一人が区内在住で、もう一人が区内への転入を予定していること
また、区長はパートナーシップの宣誓をしようとする同性カップルの共にする生活が公序良俗に反すると認められる場合には、宣誓書の受領は行いませんので、宣誓する前に、次の(3)から(5)に該当しないことを確認します。
(3)二人とも他の人と法律上の婚姻関係にないこと。
(4)二人とも他の人とパートナーシップ宣誓をしていないこと。
または、宣誓したことがある人の場合、宣誓書廃棄の手続きをしてあること。
(5)二人の関係が親子または兄弟姉妹ではないこと。

宣誓をしたカップルの方からはどのような反応がありましたか?

宣誓をしたカップルにアンケート調査をお願いしたところ、「二人の関係(存在)を公的な立場の人に伝え、認知された。存在を認められて安心感を得られた」「宣誓を機に、会社にカミングアウトした。特に人事上の制度はないが、周囲に受け入れてもらえた」など、様々な回答が寄せられました。
既に結婚式は挙げたというカップルの方で「家族を式に招待したけれど、参列してもらえなかった」という方もいました。
毎回感じることですが宣誓書を受け取ることに責任を感じますし、この取組みはとても意義があることだと思います。

LGBTの方と接する際に気をつけていらっしゃることはありますか?

LGBT当事者の方は、偏見を持たれることや、差別的な扱いをされる経験のある方が多いといわれています。
そのためちょっとした言葉づかいや態度からいろいろ感じられて気にされる方も多いので、細心の注意を払う必要があると思います。

正しい知識を持つことはもちろん、誤解を招くような言葉や態度は厳に慎むべきだと思います。これはLGBTの方かそうでない方かに関わらず、やはり相手の気持ちをしっかりと汲み取り、思いやることが大切だと思います。

LGBTダイバーシティを推進しようとする企業が増えてきています。企業が取り組む上で大切なことは何だと思われますか?

LGBT当事者は身近な存在であることを認識することが大切だと思います。人口の5%がLGBT当事者であるというデータをもとに計算すれば、社員数100人なら、5人はLGBT当事者ということになりますよね。
そう考えると身近な存在として捉えられますし、どこの企業でも多様性を尊重し、LGBTに配慮した取り組みを進める必要があると考えられるのではないでしょうか。

また、LGBTに配慮した取り組みを進めるにあたっては、まずは「知る」と「聞く」が大切なのではないでしょうか。
LGBTについて正確な知識を身につけ「知る」こと。
そしてどんな配慮があるとうれしいのか、どんなことに困っているのかなど、LGBT当事者の声を「聞く」ことがとても大切だと思います。

ありがとうございました!

編集部より

世田谷区が同性パートナーシップ制度を開始したことは、確実に世の中を動かしたのではないでしょうか。
同性カップルの方と触れ合う中で、「宣誓書を受け取ることに責任を感じますし、この取組みはとても意義がある」と感じているという若林課長の言葉が印象的でした。

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