vol.11 杉山文野さん

約11万人が参加したTOKYO RAINBOW PRIDE 2017。今回は共同代表を務める杉山文野さんに、TOKYO RAINBOW PRIDEについて、そしてLGBTダイバーシティについて、お話を伺いました。

杉山文野さん
1981年8月10日 東京都新宿区生まれ。早稲田大学大学院教育学研究科卒 フェンシング元女子日本代表。
ジェンダー論を学びその研究内容と性同一性障害と診断を受けた自身の体験を織り交ぜた著書『ダブルハッピネス』を講談社より出版。
現在は日本最大のLGBTプライドパレードである特定非営利活動法人 東京レインボープライド共同代表理事の他、各地での講演会やメディア出演など活動は多義にわたる。
日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ証明書発行に携わり、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務める。

TOKYO RAINBOW PRIDE 2017(以下TRP2017)は約11万人が参加と大盛況でした。まずは終えられての感想をお願いできますか?

2016年の参加者数は約7万人で、今年は約11万人と4万人増えたというのは非常に大きなことでした。
2012年が約5,000人でしたから、5年間でこれだけ増えたということに社会の変化を感じました。
また、以前はLGBT当事者によるLGBT当事者のためのイベントという意味合いが強かったように思いますが、最近はアライの方など、本当に様々な方が来てくださるようになったことも嬉しいです。

TRP2017に参加された方からはどのような感想がありましたか?

LGBT当事者からは「楽しかった」「勇気をもらえた」「嬉しかった」という声が多いです。
地方から来られる方も多いので「一人じゃないと思えた」という方も多いですね。
まだまだ普段の生活の中で困ることがあったり、それぞれいろんな戦いがあるけれど、年に一度ここでみんなに会うと元気をもらえると言ってくださる方も多いです。

今年は企業・団体さんも様々な分野から数多く参加されていましたね。

今年は約190の様々な分野の企業・団体さんが参加し、協力してくださいました。
当日参加された大手の企業の方々からも「仕事ということ以上にイベントとして純粋に楽しかった」と言ってもらえたこともよかったです。

TRPは人権的な活動ではありますが、多様性を祝福する場でもあります。雰囲気はフェスのような感じですし、「こんな楽しいと思わなかった」という方も多くて、楽しんでくださったことが嬉しかったです。

何かしらの形で協力したいけど何をすればよいか迷うケースも多いのですが、こういう形であれば嬉しいといったことはありますか?

それぞれの企業の得意分野で協力してもらえればありがたいです。
例えばチェリオさんにはずっとメインスポンサーをして頂いていて、ボランティアスタッフの飲み物を提供して頂いています。

今年はドン・キホーテさんから事前にご相談頂き、「レインボーグッズが少ないから作ってほしい」と伝えたところ、レインボーのウィッグや帽子などいろいろと作ってくださいました。
TRP当日も好評で、たくさんの方がドンキさんのレインボーグッズを買って身につけていました。

TRP2017の事前説明会や前夜祭・後夜祭、その他のウィークイベントなどの会場はヤフーさん、フリーさん、カフェカンパニーさんなどにご協力頂きました。以前は自分たちで会場探しから行っていたので、とても助かりました。

その他にもWASH&FOLDさんがボランティアスタッフのビブスの洗濯に協力してくださいました。
500枚くらいあるのでクリーニングに出すとそれだけでも数万円かかってしまうので、毎年私たち数名のスタッフがコインランドリーで洗濯していたんですよ(笑)。協力頂けて本当に助かりました。

こんな風に、協賛金ということだけでなく、それぞれの企業さんの得意分野で、無理なく協力してもらえればありがたいですし、協力頂くことで企業さんの方にも広告になるとか、社内のLGBTの理解が進むであるとか、そういったメリットを感じて頂ければ嬉しいです。

今後のTRPについて何か考えられていることはありますか?

今後は海外にも目を向けていきたいですね。
これまでアジアで最も参加者数が多かったのは台湾の8万人と言われていました。TRP2017は約11万人だったので、アジア最大級のイベントになることができました。

今後はアジア諸国が協力してアジアンプライドのようなものをやりたいね、と話しています。
それから2019年はゲイプライド活動のきっかけとなったストーンウォールの反乱から50年です。日本からもニューヨークのプライドパレードにフロートを出したいと考えています。

以前に比べTRPに参加する企業も増え、LGBTフレンドリー企業も増えてきました。企業はLGBTに関して、どのような取り組みができると思いますか?

企業が取り組めることとしては大きく分けると2つあるかと思います。

ひとつはLGBTのお客様に向けた取り組みです。
LGBT向けというわけではなく、全ての人をターゲットにするという視点で取り組むことで、これまでリーチできていなかった層にリーチすることができます。

例えば丸井さんの取り組みがよい事例だと思うのですが、丸井さんは「すべてのお客様のために」をコンセプトにしています。
靴やスーツのサイズ展開を幅広くすることで、トランスジェンダーの方など数は少ないけれど確実にいる層のお客様にもサービスが提供できるようになり、売り上げが伸びたそうです。

もうひとつはLGBTの社員も含め誰もが働きやすい環境をつくる取り組みです。

「セクシュアリティは仕事に関係ない」という意見もありますよね。LGBTは大人のベッドの上だけの話と勘違いされることも多いのですが、そうではなくアイデンティティの話なのです。自分が何者であるかという大切なアイデンティティを隠しながら働くのはとても大変なことです。

例えば彼がいるんだけれど職場では「彼女」と言い換えて話をしたり、上司に女性がいる店に誘われて断ったら「付き合いが悪い」と言われたり…。ひとつひとつは小さなことですが、積み重ねるとストレスになり、それが原因で辞めてしまう人もいます。

働きやすい環境においても、「LGBTのため」というよりも「全ての人が働きやすい」という視点で考えるのがよいと思います。
最近はLGBTの正しい知識を身につけられるよう研修を開催したり、同性パートナーを配偶者として福利厚生を使えるようにして不平等感をなくしたり、LGBTに関する相談窓口を設けたりといった、取り組みをする企業が増えてきていますよね。

今、日本は2020年というのがひとつの目標になっています。こうしたわかりやすい目標があれば取り組みやすいと思いますし、これをきっかけに、LGBTダイバーシティにも取り組むとよいのではないかと思います。

2020年というお話がありましたが、Nijiリクルーティングでも2020年に向けて20万人のアライを増やす「アライ宣言2020」プロジェクトを行っています。アライが増えることについてはどのようにお考えですか?

LGBT当事者としても、アライが増えていくことは嬉しいです。
TRP2017にも今まで以上にLGBT当事者ではない友達が来てくれることが増えました。
友達が子どもと一緒に来てくれて、「このおじさんも昔は女の子だったんだよ」と子どもに話すのですが、子供はぽかーんとしていましたね(笑)。

でもそういったことが大切だと思います。いいとか悪いとかではなく、いろんな人が一緒に生活しているということを子どもの頃から知ることで、大人になったときにも自然に多様性を受け入れられる人になるのではと思います。
今はLGBTについてアライと使っていますが、私は誰もが誰ものアライになれると思います。みんなそれぞれにある違いを認めることが大切なのではないでしょうか。

当社にお問い合わせいただく方の中には、就活生の方も多いのですが、メッセージをお願いできますか?

私も以前はカミングアウトして働ける企業なんてないと思っていましたし、そう思い込みすぎているところがありました。
ですが、実際にはLGBTフレンドリー企業はどんどん増えてきているので、ネガティブに考えすぎなくてもよいのではと思います。

それから、今の職場で何か嫌なことがあったら、どうすれば誰もが働きやすい環境になるのかを考え、会社に提案してみるというのもひとつの方法です。
できることから、できる人からでいいと思いますが、自分たちから働きかけて、働きやすい職場にしていくこともできます。

最後に今後取り組んでいきたいことについて伺えますか?

今後はLGBTのことだけでなく、いろんな人がいるということを伝えていきたいです。
LGBTに関する問題はどこに課題があるのかと考えたときに、マジョリティの課題なのではないかと私は思います。
私もセクシュアリティではマイノリティですが、別の部分ではマジョリティでもあります。誰にだって人には言えないコンプレックスがあり、マイノリティな部分がある。
そう考えると、マイノリティな部分を持っている人の方が多いのではないでしょうか。マイノリティの課題に向き合うということはマジョリティの課題に向き合うことですし、マイノリティが暮らしやすい社会はマジョリティにとっても暮らしやすい社会なのだと思います。
みんなにとって生きやすい社会をみんなで話し合ってつくっていきたいです。

ありがとうございました!

編集部より

TRPはこの数年でさらに大きな規模へと成長しています。そしてその中心にいるのが杉山文野さんです。
多くの人が様々な想いで関わるTRPをひとつにまとめあげるのは想像以上に難しく大変なはず。
杉山さんとお話していると、「LGBTを含む誰もが生きやすい社会にしたい」という真摯で熱い想いを感じならがらも親しみやすい温かさを感じます。
そんな杉山さんだからこそ、たくさんの人が惹かれ、想いをひとつにTRP成功に向けて動くことができているのではと思いました。

取材は杉山文野さんが経営されているタイレストラン「irodori」で行われました。
心地よい雰囲気とおいしいお料理が楽しめる素敵なお店です。

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