TRPへの協賛や、LGBT配慮の指標となるPRIDE指標でシルバーを獲得するなど、LGBTダイバーシティを積極的に進める丸井グループさん。
その想いやきっかけはどこにあるのか、株式会社丸井グループ、CSR推進部マルイミライプロジェクト担当課長の井上道博さんにインタビューしました。
本日はよろしくお願いします。まずは御社での取り組みについて伺えればと思います。
丸井グループでは、『年齢・性別・身体的特徴を超えた「すべてのお客さま」が、インクルードされ「しあわせ」を感じられる豊かな社会』というテーマで様々な取り組みを行っています。
弊社はこれまでも時代に合わせた商品開発やサービスの提供を行ってきました。
その中で、LGBTのお客様にも楽しんで頂けるお店づくりを行っていくのは、必然的であったとも言えます。
LGBTに注目するきっかけは何かあったのでしょうか。
弊社の代表が、杉山文野さんにお会いしたことがきっかけです。「すべてのお客様」に向けてと謳っているのにLGBTの方々の理解が進んでいないことに気づき、2016年2月に400名の社員に向けて、杉山さんに講演をして頂きました。その講演をきっかけに杉山さんが共同代表をされているTOKYO RAINBOW PRIDE2016※(以下「TRP」)に協賛することを決め、これまでは何もできていなかったけれども、まずは我々ができる事からはじめていこうということなりました。
※TOKYO RAINBOW PRIDE2016とは
東京渋谷で毎年1回開催される日本最大のプライド・パレード(LGBT当事者が自分らしく生きられる社会の実現を目指し、パレードやパフォーマンスを行うイベント)。多くの企業・団体がブース出展などを行っており、2016年5月開催時は7万人が参加した。
なぜTRPを最初の取り組みに選ばれたのでしょうか?
TRP会場近くの渋谷・新宿に5つの店舗があった事そして、丸井グループがLGBTフレンドリーを目指していくことを宣言するには、一番効果があると考えました。また、その取組みが広く発信されれば、今後、この取組みを進めるうえで、どのような事が課題なのか等を、当事者の方々含めた多くのお客様と、一緒に考えることにより、喜んでいただけるようになれるのでは思ったからです。
私たちの活動を喜んでくれるお客様がいれば、社員はうれしいですし、自分たちが仕事を通じて社会をよくするために役立っていると感じられれば、やりがいをより強く感じられるようになります。そうすれば、社内でもLGBTを理解しやすい雰囲気をつくれるのではないかと、考えました。
TRPに協賛されることに対して社内の方の反応はいかがでしたか。
TRPに協賛することが自社にどんな影響があるのか、最初はみんな半信半疑でした。
社内のLGBT理解をもっと高めてからの方がよいのではないか、という意見もありました。
また、LGBTに対してネガティブな感情を持っている人も中にはいますよね。そういう方に対してはマイナスのブランディングになるのではないかという意見もありました。
確かにそういったことも考えられますが、それよりもTRPに協賛することで得られることのほうが大きいのではないか、という判断で、参加することを決めました。
TRPではどのようなことをされましたか?
パレードのコース上にある渋谷のマルイとモディでは、店頭大型ビジョンをレインボーで飾ったり、外壁にレインボーフラッグを掲げました。
店内にもレインボーフラッグを多数設置し、スタッフはレインボーのバッジを着けて接客しました。
渋谷モディの店長はTRP当日、店頭に立ってパレードの参加者の方々と、とても楽しそうにハイタッチをしていました。
それまで、TRPを実際に自分の目で見たことはなかったそうですが、参加してみたら、皆さん笑顔で楽しそうにパレードされているし、弊社のレインボーフラッグを観て、感激してくださる方が多く、とてもびっくりしたそうです。
お客様アンケートでも「感謝します」といったコメントもあり、自分達のしたことが、ここまで喜んでいただけて、大変嬉しかったと話していました。
実は、TRP参加前では、LGBTの取組みに対する社内の賛同者はそれ程多くなかったのですが、参加後は賛同者がかなり増えました。
社内でのLGBT理解促進のために実際はどのようなことをされていますか?
当事者の講師をお呼びしての研修や、当事者の方々を交えたグループワークを通じての
理解促進。そして、店舗や本社ビルでの「OUT IN JAPAN」写真展の開催などを行っています。
OUT IN JAPANのモデルをされている方々は、みなさんとてもいい笑顔をされています。
私たちもお客様にこういった笑顔をしていただけるようなサービスができるようになりたいね、という話をみんなでしています。
そうすることで、すべての人が幸せに豊かに生活できる社会にすることに、少しでも貢献できるのではないかと感じています。
ダイバーシティ&インクルージョンの活動は「マルイミライプロジェクト」という名称で、グループ企業横断で行っています。参加している従業員は、それぞれの会社・店舗・事業所・部署の代表です。
プロジェクトで学んだ知見やアイデアを各自の現場に持ち帰り、店づくりやサービスなどにどう活かせるかを考え、実行しています。
このプロジェクトに参加して、初めてLGBTという存在を知ったという従業員もいます。
トランスジェンダーの方で自分に合ったサイズがなくて困っているということを知り、大きいサイズのシューズを全型並べるなどの工夫を行ったり、自分の店舗の従業員に、理解を深めてもらうため、店舗内の休憩室にLGBTの案内ブースを設置するなど、それぞれが自分たちで考え自発的に行動をしています。
今後はどのようなことを行っていきたいですか?
LGBT当事者のお客様に向けては、もっとしっかりと多くのご意見を伺いながら、さらに支持していただけるような売場づくりやサービスに、今後も力を入れてきたいと考えています。
社内に向けては、まずはお客様に向けた取組みを広げていくことで、社内風土を醸成し、自然とLGBTの社員も働きやすい環境づくりが進んでいくようになっていくことを目指しています。
弊社では以前から障害者雇用や女性活用にも力をいれてきましたが、LGBT当事者を含む、多様な個性を持った人材が、さらにいきいきと活躍していってほしいと願っています。
LGBTに配慮したサービスを今後さらに展開していくためにも、LGBT当事者の意見は欠かせない要素です。
社内にもすでにLGBT当事者は存在すると思いますが、入社後にカミングアウトをするのは勇気がいるでしょうし、カミングアウトは個人の自由なので会社側が促すものではないと考えています。
残念ながら、社内制度等の整備は、まだまだ全く手を付けられてはいませんが、まずは、LGBT当事者の方にも安心して応募していただけるような企業になるために、採用面接担当者の研修なども予定しています。