vol.5 株式会社資生堂

TOKYO RAINBOW PRIDEへの出展や、2017年1月に開始した同性パートナーを平等に処遇する規定改訂、LGBTダイバーシティにも積極的に取り組む株式会社資生堂さん。
LGBTに関する取り組みのきっかけや、活動内容などを、人事部ピープルマネジメント室、育成グループマネージャーの春日裕勝さんにお話を伺いました!

御社ではLGBTに関する取り組みはいつ頃から始められたのでしょうか?

2010年頃から岡山大学病院にて、性別適合手術をされた患者さんへのメーキャップを中心にアドバイスを実施していました。
また、店頭にはLGBT当事者のお客様が来られることもあり、美容職の皆さんは以前から身近に感じていたようです。

LGBT支援プロジェクトを本格的に開始したのは2014年の年末で、「知る・触れる・受容する」を理念として進めることを社内に発信しました。

本格的に開始するきっかけは、日本社会でのLGBTを含むダイバーシティの必要性の高まりから、自社も取り組まなければいけないと考えていたからです。

また、私自身、アメリカでの勤務経験から欧米に比べて日本はLGBTの理解、受容が遅れていると感じていました。
アメリカではLGBTの方が自然に受け入れられていました。仕事で関わるメーキャップアーティストの中にもLGBT当事者の方は多かったですし、身近な存在でした。

アメリカと比較すると、日本ではLGBTの方が特殊な存在と捉えている人がまだまだ多いように感じます。そのために差別的な扱いを受けている方も多いのではないかと思います。
LGBT当事者の社員が働きやすく、LGBT当事者のお客様にも支持してもらえる会社でありたいと考え、LGBTダイバーシティを進めなければいけないと考えるようになりました。

LGBTダイバーシティを始めるにあたり、どんなことから始められましたか?

まずは何よりも「知る」ことが大切だと考え、社内でのLGBTセッションを開始しました。
セッションでは、LGBTの正しい理解・正しい知識の共有、LGBT視点のマーケティングなどを考える場になっています。
2015年7月に全体セッションを実施し、それ以降は各部門の朝礼等でもセッションを開催しています。

また、2015年5月にはTOKYO RAINBOW PRIDE(以下TRP)にグループ会社のベアエッセンシャルに協賛してもらい出展しました。
TRPへの出展は、イベントを通じてLGBTを知るきっかけになるだろうとの考えからです。
ベアエッセンシャルはもともとサンフランシスコに本社があり、当地はLGBTの方が多い街として有名です。それもあって、TRPの出展を打診した際にはすぐに快諾してもらえました。

2016年5月のTRPには資生堂として出展されましたが、どのようなことをされたのでしょうか?

メーキャップアドバイスやサンプリング活動を行い、多くの方に好評頂きました。
TRP出展にあたっては、事前にLGBT支援プロジェクトチームが各支店をまわって説明会を開催しました。その結果イベントスタッフとして総勢144名がボランティアで参加してくれました。
LGBTについて「知る」「触れる」機会になり、イベントスタッフからは「楽しかった」という意見も多かったです。
また、「自分のスキルupになった」という意見もありました。男女で肌質に違いがあるので、男性の肌にメイクをする際には、女性のときとは違う工夫が必要だと感じたそうです。
そうした意見から、ジェンダーフリー視点の化粧品を開発しようという議論も出てきて、改めて出展してよかったと感じます。

2017年1月に同性婚認定の規定を改訂されたそうですね。

「受容する」の一環で、配偶者の解釈を拡大して同性パートナーも含む形に改訂しました。
同性パートナーを配偶者とするにあたり、どの規定を改訂すべきかは社内でもディスカッションを重ねました。
弊社のLGBT支援プロジェクトチームは専属のメンバーはおらず、全員兼務で行っています。そのためスケジュールの調整が難しいこともあり、改訂までに時間がかかりました。
ただ、いろんな部署から集まったチームなので、人事、美容職、マーケティングなど、様々な視点から意見を交わせることはメリットだと感じています。
また、チームには1名LGBT当事者もいます。当事者の意見を聞くことができ、貴重な存在です。

最後に今後についてお聞かせください。

知る・触れる・受容するという理念でスタートしたLGBT支援プロジェクトですが、ようやく同性パートナーをこれまでの配偶者と同様に処遇する規程も導入することができました。
徐々にですが社内でのLGBT理解も広がり、受容へとつながってきているように感じます。

2017年もTRPへの出展や、LGBT学生への就活支援、社内外のLGBTアライを増やす活動など、様々な活動を通して、理念実現に向けて動いていきたいと思います。

ありがとうございました!

編集部より

就職先としても非常に人気の高い資生堂さん。
以前からLGBTの存在は身近であったそうですが、会社として本格的にLGBTダイバーシティに取り組むようになり、より一層あらゆる個性を持つ人が働きやすい会社になっているのではないでしょうか。
また、今後はジェンダーフリーな化粧品の開発のアイデアも出ているなど、顧客向けサービスとしてもLGBTフレンドリーな展開が期待できそうですね!

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