LGBTダイバーシティの担当者になったけれど、どこから始めたらいいでしょうか?

こんな問い合わせをいただくことが多いです。

研修やセミナー、web上の記事などいろいろな情報がありますが、手軽で概括的にLGBTダイバーシティ&インクルージョンを理解するのにおすすめなのが『職場のLGBT読本』という書籍です。

書籍概要

柳沢氏、村木氏、後藤氏の共著によって書かれた職場にフォーカスしたLGBT関連書籍です。

“職場の”というタイトルの通り、基本的にはLGBT当事者の話の中でも企業などで働くというところにフォーカスしている点が珍しいです。2015年8月に刊行されている本なので、比較的新しい内容となっています。

印象的なコンテンツ

LGBTの職場環境に関するアンケート調査2014

はじめて本書を読んだときに、もっとも印象的だったのがこの内容でした。

セクシュアリティなどに関連して求職時の困難を感じるかどうかは、非当事者が困難を感じる人がほとんどいないのに対して、トランスジェンダーは70%もの人が困難を感じています。就職後も、勤続意欲ややりがい、人間関係といった職場環境に関する回答でも非当事者とLGBT当事者の間で明確な差が出ていることが分かります。

男女以外のカテゴリーがあるということ

あまり普段の生活では意識していない人が多いですし、LGBTダイバーシティをかじれば一番最初に出てくるものではありますが、改めて考えると、職場だけで見ても男女別になっているものは非常に多いです。あからさまな差別や悪口とは別に無意識のうちに男女カテゴリーで考えて、傷つけているケースも多いと思います。

LGBT基礎用語

かなり充実しています。ちょっとしたLGBT辞書です。おやっ?と思ったときにひいてみると便利です。

感じたこと

企業のダイバーシティ担当者が最初に読む本としては最適な書籍だと思います。バイブル・必読書といっても過言ではないです!僕は他の人に差し上げたのも含めて10冊以上購入しています!!

LGBTの基礎知識、歴史、職場に関するアンケート、企業の取り組み事例など、幅広く全般を網羅した内容です。この本を読めば、入門としては必要十分な情報が得られます。企業のダイバーシティ担当として知識をもっている方でも、読んでみると新たな発見が得られることがありますので、もしまだ未読であれば読むことを強くおすすめします。

僕が、日々、仕事や職場に関しての悩みをLGBT当事者の方から聞いていて感じるのは、当然ですが一人一人感じていること、悩んでいることが違うということです。あるいは企業も有名な大手企業とは別に、名もない中小企業がLGBT取り組みを“普通に”行っていて働きやすい職場を作っているケースもあります。

この書籍で入門的な部分を理解したうえで、次のステップとしては、一括りにはできないいろいろな事例(企業もLGBT当事者も)を知っていくことが、自社のダイバーシティ&インクルージョンを進めるうえでは役に立つと思います。

おまけ。

なぜそもそもLGBTの取り組みをするのか?という視点。特に経営層が納得する目的を明確にすることがこのダイバーシティ&インクルージョンでは大切だと感じています。人権、CSR、コンプライアンス、採用、職場環境、マーケティング…いろいろな観点があります。本書でもP116で、LGBT施策の効果を考える、とありますがここをより深堀しておくことが、効果を上げるには実はもっとも大切なことだと思います。