今回、ご紹介するのはゲイのFさん27歳です。
Fさんは、インドネシア国籍です。インドネシアの大学を卒業後、日本の大学に入学して現在は日本の企業で働いています。
Fさんの抱える悩みと選択について話をお聞きしました。
私は、インドネシア生まれのインドネシア人です。セクシュアリティはゲイです。
小さいころにあまり女子には興味がなく、他の男子が好きな女の子の話をしていてもピンときませんでした。あるとき、男子の友達を目で追っている自分に気づき、そこで初めてゲイなのかもしいれないと思いました。
インドネシアでは、同性愛に関する規制の法律は廃止されていますが、同性婚を認めているわけではありません。国民のほとんどがイスラム教なので、法律よりもイスラム教の慣習の影響が大きいです。
テレビなどでは、ゲイやトランスジェンダーのタレントが出演することもありますし、都会に行けばゲイコミュニティもあります。ただゲイコミュニティはまだまだ小さいですし、私の学生時代は身の回りではゲイということはカミングアウトをできる雰囲気ではありませんでした。
私は将来を考えたときに、この国で生きていくことは辛いと思い、もっと自由のある外国に行きたいと考えました。インドネシアの大学ではITについて勉強し、大学で首席の成績をおさめたので、日本への国費留学が認められました。セクシュアリティに関して自由があればどこでも良かったです。
日本に来てからは、全く日本語ができなかったので最初の2年間は日本語の勉強をして、その後、日本の地方の国立大学の大学院に入学してITエンジニアの勉強をしました。成績が悪いと留学が認められないので一生懸命勉強して、良い成績をとりました。
大学院を卒業したあとは、すぐに就職しないとインドネシアに帰らないといけなかったので、とりあえず就職できるところに就職しました。そこはIT系ではあったのでエンジニアとして経験を磨きながら、LGBTフレンドリーな企業を探し、今はLGBTに理解のあるIT系企業に転職しました。
日本は同性婚など認められていないし、日本の企業も理解のある企業は少ないと理解しています。ただインドネシアよりは自由があると思います。
自分のやりたい仕事をやりながら、自分のアイデンティティを隠すことなく生活ができているのはとても幸せです。
ただ自分がゲイであることは家族の中では母親にしかカミングアウトをしていません。日本にくるにあたって、家族とインドネシアを捨てるという選択をとりました。家族と一緒に暮らせないのは少し寂しいです。
インドネシアは同性愛に関してガチガチの弾圧文化ではありません。ただ昨年の10月には反ポルノ法麻薬取締法違反という名目で50名以上のゲイが逮捕されるということも起きています。これはLGBTを敵視しているイスラム教の価値観が警察組織を動かしたともいわれています。
Fさんは、国費留学をするほど成績もよく、仕事に対してもとてもまじめに取り組んでいます。日本社会のLGBT受け入れ度合いは、新卒で就活した1社目である程度、感じ取ったようです。ただ現在働いている企業のように理解のある企業もあるので、インドネシアより働きやすいそうです。
『インドネシアももっと自由な国になり、いつか帰国できればいいな、と思っています』と言っていました。