『LGBTの当事者からカミングアウトがあったのですが、対応方法などちょっとお話をしたいです』というご相談を受けることがよくあります。そのときのカミングアウトした当事者のセクシュアリティは、ほぼ100%トランスジェンダーです。

LGBTフレンドリーな取り組みをしている企業のダイバーシティや人事担当の方と話をしていても、トランスジェンダーの方向けの取り組みや相談がとても多いです。そんなとき、僕はしばしば違和感を覚えます。

ダイバーシティ&インクルージョンと言ったときに多くの企業でイメージするのは女性、障がい者、外国人、高齢者活躍といった分野です。LGBTというのは後回しになりがちです。

なぜ、LGBTが後回しになるのか?

人数が少ないから?ではないです。人数をどう数えるかは難しいですが、少なくとも企業で働いている障がい者、外国人よりはLGBT当事者のほうが人数ははるかに多いと考えられます。

後回しになる最大の理由は、

⇒⇒⇒目に見えないからです!!

目に見えなければ、“いない”のでは?という発想になるからですね。

「そうはいっても、うち(の会社や部署)には(LGBTは)いないよ」というのは、LGBT研修を終わったあとにも、よく耳にする言葉です。確かにLGBTというのは目に見えにくいですね。ただその中でもトランスジェンダーは性的指向がマイノリティの人に比べれば、目に見えやすいです。目に見えやすいからこその働きにくさもあって、それで人事部に相談する人もいれば、退職する人もいるのですが。

トランスジェンダーと違って、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・Aセクシュアル・パンセクシュアルといった性的指向がマイノリティの人は本当に見えないです。見えないですが、割合でいえばトランスジェンダーの人より、はるかに多いといわれています。実際に、弊社への相談でもゲイの当事者からの相談はとても多いです。

こういう人たちは、仕事上の働きにくさを抱えていてもそれの改善を企業に訴えることはまずしないです。黙って「一身上の都合」で退職していきます。人数は多いけれど、企業からはなかなか目を向けられないという意味では、性的指向がマイノリティの人のほうがマイノリティなのか、とも思います。

昨日もゲイの方からのご相談を受けました。その人は転職を考えていました。今の職場ではセクシュアリティをオープンにできないというのが転職理由です。

今の職場は上場企業でダイバーシティにも積極的に取り組んでいるそうです。LGBTの研修もしています。しかも、その企業にはトランスジェンダーであることをカミングアウトして、活躍している方もいるそうです。

それでも、社内の理解としてはそのカミングアウトしているトランスジェンダーの人は特別で、それ以外の理解はほとんど進んでいないという感じだそうです。今の職場でのカミングアウトは絶対考えられないと言っていました。

カミングアウトをして実際に相談があった人の対応をしていくことはとても大切です。同時に、カミングアウトも相談もしない人もたくさんいるというのも現実です。

トランスジェンダーの人への対応も個別で難しさもありますが、性的指向がマイノリティの人への対応は見えないだけに別の難しさがあると感じています。

LGBTの中のマイノリティについて考えてみました。