LGBT当事者の中でも就活で一番苦労をするのはやはりトランスジェンダーの就活生になります。
トランスジェンダー就活生の悩みとして多いのは、LGBTフレンドリーな企業が見つけられない、カミングアウトのタイミングが分からない、セクシュアリティに関する配慮や希望をどうやって伝えたらいいかわからない、などがあります。
今回は、2020年卒業見込みのFTMトランスジェンダーの就活生、Oさんの話です。Oさんはすでに内定を2社もらっています。Oさんは内定をもらうまでの就活はどうやってきたのか?また内定を複数もらった今、どうやって入社企業を選ぼうとしているのか?などについて話をお聞きしました。
私は、国立大学の化学系の学部に通っています。私はFTMトランスジェンダーです。女性として生活をすることに苦しさがあり、昨年、性同一性障害の診断を受けて、ホルモン治療を始めました。身長は156cmと高くはないのですが、身体の変化はわりと早く出てきて、声も低くなり、ひげとかもあるので、最近知り合った人はみんな男性だと思っていると思います。
カミングアウトについて模索しながら就活をしてきました。その体験を相談させてください。A社は上場企業(メーカー)でPRIDE指標も受賞している企業です。この企業はES(エントリーシート)では性別記入欄がありませんでした。名前は戸籍通り“優香”と記載して提出しました。説明会にはメンズスーツでいったのですが、その場では特に何も言われませんでした。次回の一次面接の前に、人事の方に呼ばれて、特別に面談の場が設けられて、セクシュアリティに関してどんな希望があるかを聞かれました。いろいろ細かく聞かれたのですが、雰囲気はとても相談しやすかったです。
その後、一次面接を行ったのですが、そこであっさり落ちてしまいましました。セクシュアリティに関しては、しっかり相談できたので、落ちたのはセクシュアリティが原因ではないと思っています。B社もPRIDE指標を受賞しているフレンドリー企業です。この企業もA社と同じく本名を記載して面接はメンズスーツでいったのですが、面接官の方は、まったく表情を変えることなく、セクシュアリティに関する質問もありませんでした。二次面接が最終だったのですが、そこでも聞かれることはなく、内定をいただきました。まだセクシュアリティに関しては何も人事の方と話していないのですが、LGBTの取り組みはいろいろやっているようなので、働きやすいかなと思っています。
C社は上場会社ですが、LGBTに関しては特に取り組みはしていないようです。HPなどを見ても女性活躍などは書いてあるのですが、LGBTに関するものは何も記載がありません。この企業には、ESの時点で本名ではなく、“優斗”という通称名でエントリーしました。面接はいつものようにメンズスーツです。面接は4回ありましたが、一度もセクシュアリティに関して聞かれることはありませんでした。そのまま内定をいただいたのですが、おそらくまだ男性だと思っていると思います。ただLGBTの取り組みはないと思うので、ちょっと難しいかと思っています。
OさんはB社とC社のどちらに入社しようか悩んでいました。いろいろ聞いてみると仕事内容や社風などはC社に惹かれているようでしたが、LGBTという部分の働きやすさでB社のほうがいいかも、と考えていました。
その後、C社にも自分のセクシュアリティをカミングアウトして希望事項を相談してみたところ、Oさんの心配はまったくの杞憂で、C社ができるだけの対応をしてくれるとのことで、C社への入社を決めました。C社はLGBTの取り組みは確かにまだほとんどなかったですし、だからこそOさんもエントリーの段階で本名を書けませんでした。またフレンドリーという確証がないからこそ、なにも言わずに辞退も考えていたのですが、思い切って相談してみたら、実は働きやすい環境だったという事例です。
Oさん曰く、セクシュアリティに関する対応で一番うれしかったのはA社だそうです。ただC社のように知ったうえで向き合ってくれるという姿勢もとても嬉しかったとのことでした。