現在の日本では戸籍上の同性カップルが結婚をしようと思っても、法的に婚姻関係を結ぶことはできません。法律の解釈は分かれるところですが、現実的には役所で婚姻届けが受理されません。

それでもLGBT当事者の希望をうけて、さまざまな自治体が独自のパートナーシップ制度をスタートさせています。

パートナーシップ制度を利用するメリットは大きく3つあります。

  • 二人の関係がパートナーであることが公に認められる
  • 自治体のサービスが受けられる(公営住宅の入居など)
  • 民間の同性向けサービスを受ける際の証明になる(生命保険の受取人、賃貸住宅の同居、病院での面会、住宅ローンの連帯保証人、企業独自の福利厚生制度など)

二人の関係が公に認められるというのは、経済的なメリットは特にないのですが、同性カップルにとっては心強く、精神的な充足感が得られるという意見も多くあります。また民間の同性向けサービスというのは年々拡大してきており、ここでは経済的なメリットを得ることもできます。

一方で、法律上の婚姻関係では得られるけれど、パートナーシップ制度では得られないものとしては、最も大きいのが税制面になります。国が認める配偶者ではないので、配偶者に関する税制の優遇措置も受けられないですし、相続に関しても税務上のメリットを享受することができません。またそもそも自治体のパートナーシップ制度は受けられる居住地が限定されるという制約が大きくあります。

このパートナーシップ制度は自治体ごとに異なっています。この制度で認定されるための主な基準は次のとおりです。

  • 自治体のエリアに住所があること
  • 成人であること
  • パートナーシップや婚姻関係が他にないこと
  • 近親者でないこと

また自治体により、自治体が“証明書”を発行するケースと、当事者の宣誓書に対する“受理書”を発行するケースの2つがあります。さらに条件として戸籍上の性別が同じであること(同性)としている自治体と、異性でも認める自治体があります。

異性でも認める自治体としては、異性愛カップルの事実婚まで含むケースと、FTMとMTFトランスジェンダーカップルの同性パートナーなどを想定しているケースがあります。FTMとMTFのパートナーの場合は、戸籍上の性別は異性になることも多くその場合は法律上も結婚(婚姻)することが可能ですが、仮に法律上の結婚をしてしまうと、今度は性別移行の条件に抵触して、性別移行ができなくなるという問題もあり、自治体のパートナーシップを利用するというケースもあります。

このようなパートナーシップ制度ですが、2020年3月末現在では全国で34の自治体が制度を設けています。このうち茨城県と大阪府は、都道府県単位での制度になります。

また福岡市―北九州市―熊本市、横須賀市―鎌倉市―逗子市などのように一つの自治体だけでなく近隣のいくつかの自治体が相互利用を認める動きも出てきており、近隣に引っ越しをした場合でも継続的に制度を活用できるケースもでてきています。

パートナーシップ制度導入自治体一覧

  • 2015年
    渋谷区、世田谷区
  • 2016年
    伊賀市、宝塚市、那覇市
  • 2017年
    札幌市
  • 2018年
    福岡市、大阪市、中野区
  • 2019年
    千葉市、大泉町、豊島区、江戸川区、府中市、堺市、横須賀市、小田原市、枚方市、 総社市、熊本市、宮崎市、鹿沼市、北九州市、茨城県、長崎市、三田市、市、交野市、横浜市、大東市
  • 2020年
    鎌倉市、三豊市、尼崎市、大阪府

パートナーシップ制度を導入した自治体数の推移

 

このように導入自治体は急速に増えており、4月以降もさいたま市、新潟市、相模原市、浜松市、港区、文京区など13の自治体での導入が決まっています。

自治体のパートナーシップ制度の適用エリアの人口は約2800万人で日本の約3割を占めています。これはその証明書(受領書)を受けるカップルにとってもメリットがあるだけでなく、広く社会全体にLGBT理解を進める大きな原動力になっているといえます。