『正々堂々 ハイヒールをはいたお坊さん』

僧侶でメイクアップアーティストでLGBTQの西村宏堂さんが説く、自分を大事にする生き方について書かれた本です。

20年以上、自分が“普通じゃない”ことに罪悪感をもち、周囲と違うセクシュアリティを隠し続け、劣等感を感じていた著者が、大人になってからさまざまな体験を通じて、今はユニークであることに正々堂々と胸を張って生きている姿が描かれています。

勇気がもらうことができ、前向きになれる本です。セクシュアリティでも、それ以外のことでも何かに悩み不安を持つ人には特におすすめです。

書籍概要

目次

第1章 私の人生は私が決める
~顔も見えない世間の価値観に自分の人生のハンドルを渡しちゃダメ!~

第2章 自分が変わったから、味方が現れた
~自分の好きな自分で生きていくって決めたら、人間関係を怖がっていられない~

第3章 自分を苦しめる「常識」を書き換えてみた

第4章 自分を好きになれる自分にアップデート

小さい頃の様子から、海外での体験、他のセクシャルマイノリティとの出会いやカミングアウト、仏教の教えまだ幅広く書かれています。一つ一つわかりやすく、共感できる話も多いのでとても読みやすいです。

印象的なコンテンツ

『私は私のことを「男でも女でもない」と思っているし、「男でも女でもある」とも思っているんです。私がLGBTQの一員あるのは間違いないけども、正確に表現しようと思うと、LGBTQのどのカテゴリーにも属さない』(P28)

西村さんのセクシュアリティについて自分でどう考えているのか?ゲイもトランスジェンダーもクエスチョニングも違うけれど、明確に伝えられないもどかしさを感じています。

それだけ、人の性は多様ということです。

『ある日の掃除の時間、私の背後から「西村、あいつオカマでしょ?」という声が聞こえてきて。その瞬間、凍りついてしまった。私の心は布団圧縮袋の空気が抜かれるようにギューっと締め付けられて、小さく小さく、しぼんでいきました』(P75)

高校時代、グループが男女に分かれる中、どちらのグループにもなじめず孤独になっていたときに、それほど仲良くないクラスメイトから投げつけられた言葉です。「男の人が好きなんだよ」と言える強さを当時は持っていなかったそうです。

『阿弥陀経の中に「青色青光(しょうしきしょうこう)、黄色黄光(おうしきおうこう)、赤色赤光(しゃくしきしゃっこう)、白色白光(びゃくしきびゃっこう)」という言葉があります。極楽浄土の池には蓮が色とりどりに美しく咲き誇っていて、どんな色でもそのまままで素晴らしい。すべての人は、どんな場所でもその人が持っている力や個性を発揮して光り輝くことが尊いのだ、という意味のお経』(P95)

2千年も前から、仏教が多様性を応援していると知ったそうです。

『作法は教えの後にできたものです。どんな人でも平等に扱われるという法然上人の教えがもっとも大事なことですから、作法は男女どちらのものでもかまいませんよ』(P108)

香炉をまたぐ作法が男女で異なるなかで、形式的な作法や格好の違いではなく、本質が大切という答えをもらい、仏教への思いが大きく変わっていきます。

感じたこと

西村さんは、肩書も幅広くテレビ(NHKやBBSなど)にも出演し、このような本まで出版して大活躍しています。西村さんの仕事内容は多くの人にとってそれほど身近ではないかもしれませんが、活躍しているLGBTQとして、生き方や考え方がロールモデルとなるかと思います。

お坊さんならではの、仏教の教えが随所に書かれており、それがまたとても興味深く心に残ります。