『りんごの色~LGBTを知っていますか?~』。
りんごの絵を描くと多くの人が赤で描きますが、本当に赤でしょうか?
大分県が製作したマンガで、2018年度には、人権啓発資料部門で法務大臣表彰を受賞しています。自治体が作った人権啓発用漫画と聞くとちょっとお堅いイメージがありますが、読むための予備知識も不要ですし、身構えることも必要ないです。LGBTがテーマですが、実際にはLGBTだけにとどまらず多様性全般につながる話です。ダイバーシティ&インクルージョンに関連してLGBTというのも取り上げる企業が多いですが、まさに本漫画はそれを体感できます。
プロがストーリー構成と作画を担当しており、ボリュームも50Pあるため、単なる知識の紹介ではなく、ストーリーの中で伏線回収などもあります。
大分県が冊子を印刷していますが、WEB上で読むこともできます(全編無料!)。もし今、15分ほど時間があれば、この記事(ネタばれあり)を読む前に、まずは下記のURLから読んでいただければ、良さがよくわかると思います。
『りんごの色~LGBTを知っていますか?』
https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2048601_2376667_misc.pdf
主人公は中学生です。大分県内の中学校、高校には教育用に配布されていますので、生徒や教師、親などが本来の対象ですが、読みやすいので社会人(企業の一般社員)にもお勧めです。
書籍概要
主人公は中学生のかすみ。親友の奈々から告白をされて、奈々が同性愛者であることを知ると同時に、親友との関係性についても混乱します。保健室の先生のサポートを受けながらLGBTについての理解を深めていくに、LGBTをテーマにした演劇を企画します。担当の先生からは面白そうと!と後押ししてもらえるのですが、教頭先生から大反対を受け、話はそのまま丸く収まるという形にはなりません。
その後、かすみがどう行動するのか?教頭先生に理解してもらえるのか?周りの反応はどうなのか?などが見所です。
印象的なシーン
「赤だって思い込んでる人には「ただの赤」にしか見えないだけなんだ(P1)
この漫画のタイトルでもあり、1ページ目に出てくるフレーズです。
りんご=赤、というのは、自分自身の思い込みである、と読者に気づかせてくれるところから、漫画は始まります。
『それは違うよ!キミ達だって同じ黄色じゃない!キミは濃ゆい黄色だし、キミは青みがかった黄色。ボクは少し目立つけど、みんなと同じで「ちょっと違う」だけ」なんだ』(P36)
みにくいアヒルの子の劇中で、1匹だけほかとは違う大きさや色のアヒルの子がいじめられるシーンです。同じく色の話で別のたとえを持ってきます。
『LGBTの活動をしているとさ、「当事者の方」って言われ方される事があるけど「男」と「女」と「LGBT」って分かれるもんじゃないと思うんだ。みんなが「当事者」で一人ひとりが違うんだから』(P14)
LGBTの話の際に、「特別視をしない」という表現がよくされますが、まさにそれを表現したセリフです。SOGIの考えにも通じますが、性自認や性的指向など誰もが“当事者”ということを気づかせてくれます。
感じたこと
この漫画には、レズビアンやバイセクシュアルやゲイの“当事者”もでてきますが、アライの“当事者”もでてきます。この漫画全編を通じて訴えているのが、“みんな違う”ということです。LGBTが特別なのではなく、みんないろんな違いがある中での違いの一つということが伝わってきます。
読みやすく、自然にダイバーシティ&インクルージョンが伝わってくるので、社内でも紹介してみてはいかがでしょうか?また漫画版だけでなく、実写版動画もyoutubeで見ることができます。約20分と尺もお手軽なので、研修などで見てディスカッションする材料にするのも良いかと思います。