SOGIハラの労災に関するニュースが相次いで報道されています。一つは、大阪府茨木市の労働基準監督署が、性別変更をしたトランスジェンダー女性に対する、職場内での言動を「SOGI(性的指向・性自認)に関する侮辱的な言動」で、パワハラにあたると労災として認定しました。また神奈川県でもトランスジェンダー女性が、SOGIハラを受けたとして、労災申請をしたというものです。

それぞれがどんな内容だったのか、またSOGIハラが生じやすい要因とどうすればSOGIハラを防止できるのかを考えてみました。

 

(事例1)
男性として生まれたAさん(50歳)は幼いころから性自認は女性で、2004年には性同一性障害特例法に基づき、性別を法的に女性に変更し、2013年から大阪府内の病院で看護助手として勤務。その後、Aさんが精神障害を発症する前のおおむね半年間に、職場の病院で男性のような名前で呼ばれていたなどと認定。こうした言動は「(看護助手の)性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」で、パワハラにあたるとした。

(事例2)
神奈川県の大手メーカーに勤めるBさん(40代)は、7,8年前に性同一性障害の診断をうけ、2017年には会社に性自認は女性であると伝えたうえで部署移動をした。その直後から上司から他の社員の前で「彼」と呼ばれ、「女として見られない」などの侮辱を受けるようになった。やめるように求めても繰り返された結果、うつ病を発症し、2021年の9月14日付で労災申請をした。

 

この事例は両方ともトランスジェンダー女性の話ですが、昨年はゲイのアウティングに関しての労災申請もありました。

SOGIハラに関しては、2020年にパワハラ防止法が制定され、SOGIハラはパワハラに該当することが法律上明記されています。このパワハラ防止法は2022年には中小企業を含めたすべての企業が対象になります。

法律上も、また従業員の働きやすい環境づくりという観点からもすべての企業はSOGIハラ防止が重要な課題となっているにも関わらず、職場でのSOGIハラは多いのが実情です。

 

なぜSOGIハラは起きるのでしょうか?

ハラスメントには加害者が相手を傷つけようという意思(悪意)をもって行うケースと、傷つけるつもり(悪意)がなく結果的に傷つけているケースがあります。上述の2つの事例は、報道内容を見る限り加害者側に悪意があったように見えますので、そのような場合は厳しい処分が求められます。

一方でSOGIハラにおいては他のハラスメント以上に、悪意のないハラスメントが多いのが特徴です。つまりハラスメント加害者はハラスメントを行っている自覚もなく、また周囲の人もハラスメントだとまでは考えていないケースもあります。

このような悪意のないハラスメントが生じる本質的な原因としては、価値観の相違からくると考えられます。ハラスメントは相手がどう感じるかの想像力の欠如という言い方もされますが、それも含めて、価値観が異なり、さらに自分の価値観が当たり前/常識と思っているために、気づかないうちにハラスメントを行ってしまうのです。

特にSOGIハラに関しては、多くの人がLGBTなど性的少数者の考えや感じ方が分からないために、引き起こしているケースも少なからず見受けられます。LGBTに関しては単に数の上で少数派というだけでなく、カミングアウトがしにくいという状況の中で実際の存在よりもさらに少なくしか接することがないということも要因として考えられます。

 

では、SOGIハラを防止するためにはどうするのがよいでしょうか?

まずは知識です。答えは一つではないので“正しい知識”というよりは、さまざまな場面に応じた“適切な知識”をもつことが大切です。共感だけでなく、知識として知ることです。さらに単に知るだけで終わっては意味がないので、身に着け言動が変わることが大切です。書籍などで読むことも良いですが、研修などでリアルな事例などを通して自分事として感じることが、まずは第一歩になると思います。

あとは、これを意識しなくても自然に言動につながるように、仕事の中の日常に落とし込むような活動も必要です。

価値観の変化は一朝一夕にできるものではありません。だからこそ地道な活動をすることが大切ですし、結果的に強い組織をつくることにつながると考えています。

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