LGBT当事者の中にも、職場でカミングアウトをしている人もいれば、していない人もいます。職場でカミングアウトをしている人の中にも、かなりオープンに多くの人にカミングアウトをしている人もいれば、本当に信頼できる人限定でカミングアウトをしているという人もいます。

カミングアウトをするか、しないかは、本人の考えが尊重されるべきです。実際の職場でみるとカミングアウトをしている人はかなり少ないと言われております。

カミングアウトをしていない人の理由もさまざまですので、カミングアウトをしていない人それぞれの考え方や体験談をご紹介します。

 

Aさん・・・37歳。レズビアン。

「私の仕事は研究職です。職場では一切カミングアウトをしていません。カミングアウトをしていない理由は、セクシュアリティは仕事にはまったく関係ないと思っているからです。この年齢になるとあまり言われなくなりましたが、20代のころは、男女問わず恋愛話とか結婚話を聞いてくる同僚もいました。恋愛話に限らず、話したくない(話す必要がない)ことは適当にかわしていますね。

プライベートでは友人にも親にもカミングアウトをしています。異性愛者の友人であっても恋愛話はフツーにしますし、親には私のパートナーも紹介しており、一応理解はしてもらっています。職場の仲間も大切ですし、自分のことを知ってほしいという気持ちはありますが、自分の恋愛観とかそういった部分ではないという感じですね」

 

Bさん・・・23歳。ゲイ。

「僕は、新卒で入社して2年目です。就活のときにはやはり働きやすい職場が良いと思ったので、業界や企業内容だけでなく入社するときにはLGBTQの取り組みとかも調べたうえで決めました。実際に会社ではパートナーシップ制度もあり研修やeラーニングなども実施しています。

ただ僕の直属の先輩がかなり同性愛に偏見を持っている人でちょっと辛いですね。僕自身が直接言われたことはないですが、会社の他の部署の人のことを「あいつホモじゃない?」みたいなことをよく言っています。周りも同調はしないですが、特に注意するわけでもないです。会社全体の問題というよりはその人の個人的な問題かもしれませんが、少なくとも今はカミングアウトをしたらどうなるか怖いですね。とてもカミングアウトはできないです」

 

Cさん・・・28歳。ゲイ。

「私は今、東北の地方都市に住んでいます。正直、かなり田舎です。仕事は金融系で営業職をしています。お客さんは法人も個人もありますが、年配の人が多いのもあるかもしれませんが、どちらにしてもLGBTという言葉の理解度も怪しい気がします。

カミングアウトに関しても、東京とかとは違って、ここら辺では職場でオープンにしている人は見たことがないです。もしバレて広まったら住んでいられない気もします。カミングアウトをして理解してもらえるとも思えないですし、そもそもカミングアウトをするという選択肢はちょっと考えられないです」

 

Dさん・・・30歳。FTMトランスジェンダー。

「自分はFTMトランスジェンダーです。すでに戸籍変更も済ませています。見た目も背は低いですが、今は、ほとんど男として見られるので、カミングアウトをしないと困るということもありません。前職ではまだ戸籍変更前で、ホルモンの影響で見た目も変化があったので、人事にも職場でもカミングアウトをしていました。そこでは周りから変な目でみられるというようなことはなかったですし、男性として勤務はしていました。理解のある職場だったとは思います。

ただ、セクシュアリティ面以外の理由なのですが、転職しようと思い、退職後に手術をして戸籍変更もしてから、今の会社に就職しました。今の会社では人事も含めて誰にも言っていないです。男性として法的にも見た目的にも認知されている、やっとここまでこれたという気持ちが強いです。今の職場に理解があるかどうかに関係なく、わざわざ過去について話したくないという気持ちが強いです」

 

Eさん・・・35歳。MTFトランスジェンダー。

「私はMTFですが、まだクリニックに通い始めたばかりで治療とかも一切していないです。将来は手術もして戸籍変更をしたいという気持ちはありますが、まだちょっと先かなと思います。今の会社では営業職として7年間働いています。一応、男性らしくメンズスーツをきて髪も短くしています。本当はもっと髪も伸ばしたいですし、メイクもしたいですし、トイレも男性用じゃないほうがいいですね。

でも、まだ難しいかなと思っています。今、この状態でカミングアウトをして女性として働きたいとか言っても、たぶん周りの人も困ると思うんですよね。ホルモン治療を始めたら、胸とか体つきも変わると思うし見た目にも変化があるので、そうなってきたらカミングアウトをしないといけないかなと思います。戸籍変更はまだしばらく先になりそうですが、女性としては働きたいとは思っています」

 

非当事者の中には、LGBTの人は「なぜカミングアウトをしたいのか?」あるいは「なぜカミングアウトができないか?」というような疑問を持つ人もいます。カミングアウトをしたいとか、できないとか、したくないとか、それぞれにいろんな考えや想いがあり、正解というのはありません。セクシュアルマイノリティといっても人によっていろんな考え方も希望も違うということを知ることが第一歩かと思います。