Nijiリクルーティングでは、転職支援サービスを提供しているので、転職を考えている当事者からのご相談も多くいただきます。

LGBTの当事者の中には、セクシュアリティに関連する理由で転職を考える人も多くいますが、そのほとんどが現職には転職理由をちゃんと伝えることはないです。
企業としては退職理由がよくわからないうちに、優秀な従業員が辞めていってしまうということも起きています。

今回は、転職を検討しているOさん(29歳 ゲイ)のお話です。

私は、29歳の同性愛者です。大学を卒業して新卒で今の会社に入りました。今の会社は創業100年を超える老舗の食品系の製造業の会社です。私はそこでルート営業を担当しています。

私は話し方が少し柔らかい感じですが、周りからみてゲイだとバレたことはなく、会社でもカミングアウトはしていません。

今の会社は老舗だからこそ事業基盤は安定していて、長く働いている人も多くいます。その分、古い体質や価値観だし、そこに働きにくさを感じています。
私がいる部署も含めて、もともと男性の割合がかなり多い職場で、女性は制服があって、一般事務として働き、男女での仕事の役割がはっきりと分かれています。
職場での飲み会も多く、恋愛系の質問や話題は多いです。あとはルート営業だからこそ、お客様とも飲む機会も多いです。お客様も比較的、年齢の高い男性が多いせいか、女性が接客してくれるお店に行くこともあります。
特に最近は、30歳目前ということもあり、『Oさん、結婚しないの?』というのはよく聞かれます。

こういう状況だと、とてもカミングアウトをするなんて考えられないですし、いまのところ、こういう質問や話題に関しては嘘をついたり、適当にかわしたりしてはいるのですが、正直、憂鬱ですし、知らないうちに疲れが溜まっている気がします。

飲み会のあとは、自分の素をだしたくて、新宿二丁目によく行ったりします。
隠し事をしないでしゃべれるというのは、本当に楽で、自分らしくいられる貴重な時間です。ただ結局、飲みすぎて翌日、しんどくなったりしています。

私は今は彼氏がいなくて、友人にもあまりカミングアウトをしていないから、余計、自分らしくいられる時間が少なくストレスが溜まりやすいのかもしれません。

私は、いま、転職を考えています。転職理由としては、一つは今のルート営業の仕事をこのまま続けてていいのか?もっとキャリアアップができないかという気持ちと、もう一つはセクシュアリティに関連して、これ以上ストレスが溜まるのが耐えられないという気持ちです。

どちらが強いということはなく、半々という感じですが、逆に言えば、どちらかが解消されるなら、もう少し今の職場で頑張ってもいいという気持ちもなくはないです。

転職自体は2年くらい前から考えていて、まだ実際には転職に踏み切れていないのですが、30歳を前に真剣に悩んでいるところです。

Oさんは『飲み会の席では、常に頭のどこかで言葉の変換作業をしている』と話していました。
嘘や隠しごとをずっと続けるストレスはかなり大きなものです。だからこそ、職場の全員は難しくても、何人かでもアライ(理解者)がいると心理的安全性はかなり違うという人もいます。

Oさんの職場でも誰も理解がない、ということはないと思いますが、それが見えないということが職場の課題だと感じました。