LGBTという言葉は性的少数者(セクシュアルマイノリティ)の総称として社会の認知度も高くなっています。
しかし、LGBTの中にはたくさんのセクシュアリティがあり、またそれぞれの定義も必ずしも明確になっていません。
そのため、いわゆる”L””G””B””T”に含まれないマイノリティも多くいます。

今回は自分自身がアセクシュアルかフィクトセクシュアルかパンセクシュアルか迷っているというSさんの体験談をご紹介します。

※アセクシュアル/アロマンティック:誰にも恋愛感情や性的感情をいだかない人
フィクトセクシュアル/フィクトロマンティック:架空(fiction)のキャラクターに恋愛感情や性的感情をいだく人
パンセクシュアル/パンロマンティック:あらゆる性別の人に恋愛感情や性的感情をいだく人

私は、自分の恋愛観はかなり変わっていると自覚しています。なので私の話をほかの人が理解できないだろうと思うのですが、こんな人もいると知っていただければという気持ちで、お話します。

私は5年前から、ある本の主人公(「彼」と呼びます)に恋をしています。初めて、その本を読んだときに、「あっ!わたしはこの人のことを好きだ!」と突然、思ってしまいました。
マンガやアニメではないので、“彼”の顔や姿を見ることはできません。活字から、私が想像した顔や姿があるだけです。
自分でもこの気持ちに戸惑いはありました(今でも不思議な気持ちもあります)。

私はこれまで、実は本当の意味での恋愛をしたことはありませんでした。
私は戸籍も自認も女性です。
男性に対しても女性に対しても、素敵な人!とか魅力的!と感じる人はいました。
ただその気持ちは、この人が大好きでずっと一緒にいたい!とかではなく、素敵な人だから一緒にいてもいいかな。というくらいの感覚です。

当時は、自分の性的指向に関して真剣に考えたことがあまりなく、なんとなく自分自身はマジョリティだとも思っていました。

しかし“彼”に会ってからは、たぶん他の人がいう、本当の恋愛をしていると感じています。”彼”のことを考えるとドキドキした気持ちになるし、一緒にいたいと思っています。もちろん、実在しないことはちゃんと理解しています。

”彼”のことを考えるようになってから、自分自身のセクシュアリティが気になりだしました。
ネットとかでいろいろみているうちに、フィクトセクシュアルやアセクシュアルという言葉を知りました。

男女どちらの性別にも恋愛感情を持ったことがないという意味ではアセクシュアルなのかもしれませんが、“彼”を好きという気持ちを考えるとフィクトセクシュアルなのかもしれません。

でも、好きなのは“彼”だけなので、フィクトセクシュアルとも少し違うかもしれないとも思います。

あるいは、二次元も含めて相手の性別などを気にしないという意味ではパンセクシュアルというのに当てはまるのかもしれません。

自分の性的指向に関しては、特に隠してはいないです。
恋愛の話になれば、友人にも職場の同僚にも特に隠さず“彼”のことを話しますが、あまり伝わっていないと感じています。
周りの人からすると“夢女子(ゆめじょし)”のような、趣味の一つとして思われ、真剣な恋愛とは受け取られていないんだと思います。

こんな感情を理解されるとは思っていないですし、職場などで働きにくいということは特にないです。ただ、もう26歳なので、両親にはどう伝えるかは悩んでいます。

アセクシュアルやパンセクシュアルは、どういう性別の“人”を恋愛対象にするか、あるいはしないか、という点で、性的指向の話なのでLGBTという属性に該当しますが、フィクトセクシュアルは“人”が相手ではないのでLGBTには該当しないという考えもあります。

「今後、どのような恋愛をするか、あるいはしないのかは分からないから、自分自身のセクシュアリティを決めなくてもいい」と、Sさんは今では思っているそうです。
そういう意味では、クエスチョニングに含まれるのかもしれません。