他の人のセクシュアリティに関して、本人に直接聞くことはカミングアウトの強要につながるケースがあります。
特に職場で上下関係がある中での会話の場合はパワハラとなることもあるので、注意が必要です。

一方で、職場の上司や同僚にカミングアウトをすることで働きやすくなることもあります。

今回は、飲みの席で職場の先輩に、自分のセクシュアリティを聞かれたというAさんの体験談です。

私は、今の会社に新卒で入社して4年になります。
セクシュアリティは男性同性愛者(ゲイ)です。
これまで同じゲイの友人にはカミングアウトをしていますが、異性愛者の友人や自分の家族には何も言っていません。
職場でも「彼女いるの?」「どんな人(女性)がタイプ?」などの会話はあるので、そのたびにはぐらかすようにしています。

ずっと同じ職場で2歳年上の先輩がいます。
入社以来、いろいろ仕事上の面倒を見てもらっており、かなり仲良くさせてもらっていたので、これまでもときどき仕事終わりに一緒に飲みに行くことはありました。
先日も二人で飲みに行って、そのときに先輩から「そういえば、おまえってゲイ?」といきなり聞かれました。

その瞬間、正直、心臓が止まるかと思いました。
・なんでバレたんだろ?
・もう会社にいけない
・明日からみんなの冷たい視線が。。。
・ゲイとバレるような言動をしたかな?
・もう何も言わないでー

などなどいろいろなことが一瞬で頭を駆け巡りました。

とりあえず、さり気なさを装いながら(たぶん、焦ってるのがバレバレだった)、「何言ってるんすか、そんな訳ないじゃないですかー」と返しました。

そうしたら先輩は「そうか。まあ俺はおまえがゲイでもゲイじゃなくてもどっちでもいいんだけど、何か困ったことがあれば言えよ」といって別の話に移っていきました。

その後、1時間くらいどうでもいい話をしていたのですが、自分の中では先輩とのさっきの会話が脳内をぐるぐる回っており、結局、自分から「実は、さっきの話ですけど・・・」といってカミングアウトをしました。

先輩は「ふーん、そうか。まあ何か困ったことがあれば言えよ」とさっきと同じセリフをいうだけで、それ以上は何も聞かれませんでした。

その晩も、翌日も、それ以降も、先輩は特にその話に触れることはないです。最初に私が心配したようなアウティングやからかいなどは全くなく、もちろん他の同僚からそれについて何か聞かれることもありません。
先輩は、ほかの同僚が恋愛話など振ってきたときには、さり気なく話題を変えてくれたりしています。

自分のセクシュアリティやそれをカミングアウトするかどうかなど仕事には全く関係ないことなのですが、でも、一人の先輩だけですが、カミングアウトをして受けとめてもらえたことで、職場での見える景色が、薄い膜がなくなってクリアになったような気がします。

これまで周りにカミングアウトをしてこなかった理由は、仕事には関係がないことだから“カミングアウトの必要がない”と自分では思っていたのですが、実際にカミングアウトをした今振り返って考えると、やっぱりカミングアウトをしたあとの“周りの反応を想像すると怖かった”ということだったかと思います。

Aさんは、強要のような形でカミングアウトをしました。自分では踏み越えられなかった(必要がないと思っていた)ハードルを図らずも乗り越えられたのは、振り返ってみると結果オーライだったそうです。

カミングアウトをする“楽さ”も少しわかった気がするので、すぐではないけれど、職場以外も含めて周りの人に少しずつ自分をもっと知ってもらう努力をしていこうと思います、と話してくれました。