『元女子、現男子。忘れたい過去もある。けど、それを含めて僕だと気づいた。』
YouTuber「かなたいむ。」さん(本名:木本奏太)がFTMトランスジェンダーとして生きてきた人生について、家族へのカミングアウトや性転換の治療などのリアルを語ります。
どうやって「自分らしさ」を見つけたのか?何に悩み、どう向き合ってきたのか?
トランスジェンダーといっても、生まれ育った時代によって周りの理解度も違いますし、自己受容の度合いも変わってきます。
1991年に生まれた著者の時代背景も頭の片隅にいれながら、一人のトランスジェンダーの体験談として読んでみることで、トランスジェンダーを知ることにつながっていきます。
トランスジェンダーについて理解を深めたいという人におすすめの一冊です。
書籍概要
~著者より~
僕は元々は女性で、今は男性です。
正直、生きるのにめっちゃ悩みが絶えなかった。
自分がどう生きていくのか、ずっと悩んでいた。
けど、これって僕だからじゃなくて、みんなそうだと思います。
どう生きていくのか?
どんな未来になるのか?
分からなくて、悩んで。
悩むたびに「正解」を探す。
自分は正しいのか?
間違っていないだろうか?
その「正解」は誰が決めたものなのか。それも考えずに、「こうあるべきだ」に囚われ、ただ型に自分をはめてしまっているのではないのか?
目次
CHAPTER1 「男として生きたい」と母にカミングアウト―女から男に変わることに必死だった
CHAPTER2 性転換する前とした後で―手術した後も自分は自分だった
CHAPTER3 「男」「女」とカテゴライズされることの違和感―それぞれ「一人の人間」
CHAPTER4 話すことと自分らしく生きる幸せ―男として駆け抜けた20代
印象的なコンテンツ
『僕は「知らない幸せ」ってあると思ってて。話したい、というのは僕のエゴなんじゃないか。』(P32)
両親へのカミングアウトを決意しながらも、なかなかカミングアウトをできないときの気持ちを表しています。
一番近い関係の人だからこそ、カミングアウトは簡単にはできません。著者の両親は耳が聞こえないため、母親に手紙でカミングアウトをします。
『僕は母に「気持ちは男で、男として生きていきたい」と伝えただけであって、「どう接してほしいか」を全く話していないと気づきました。僕は母に自分の価値観を押し付けただけだったのです』(P38)
手紙でのカミングアウト後の母の反応は悪い意味で以前と変わらず、“娘”扱いを続けます。そのときの気づきです。
カミングアウトを受けた側は、具体的な行動をどうしたらいいのか?どうしてほしいのか?分からないということもよくあります。
著者は、言われたら傷つくことば、やりたいこと、やりたくないことを細かく具体的に伝えます。
『気持ちはどっちなんや?』(P86)
大学時代にバイトをしていたコンビニのオーナーから突然、言われた言葉です。
聞かれた勢いで、思い切ってカミングアウトをすると『やっぱりそうか、僕の同級生にもおるんや』とそのまま受けとめてくれました。
『「周りと違うことはいけない」ということに敏感になり始めました』(P150)
高校時代には、自分で性同一性障害だと気づいていたものの、それがバレてはいけないと“カモフラージュ大作戦”をします。普通の女の子にみられるように、髪を伸ばし、化粧をし、服を変え、男子に告白をし、『一生、女として生きる』と決めます。
感じたこと
本書では木本奏太さんがそのときに感じていた悩みや不安や喜びなどが丁寧に書かれています。また小さい時からの現在に至るまでの写真が何枚も載っていて、まさにライフヒストリーが伝わってきます。
YouTubeでは、ご両親や弟さんも出演しており、カミングアウトをうけたときの率直な気持ちを振り返り、またどうやって受け入れていったのかなどの話も聞くことができます。100万回再生の人気動画です。
是非、本書とあわせてYouTubeも視聴してみてください。