今回ご紹介するのは、派遣での仕事を探しているNさんのお話です。
Nさんは、戸籍の性別は男性で、Xジェンダー(ノンバイナリー)という性自認です。

Xジェンダーの方は、トランスジェンダーとは違った働く上での難しさがあります。
さらに正社員ではなく、派遣社員という雇用形態上の難しさもあります。
Nさんがどのような難しさを感じているのか、ご紹介いたします。
※Xジェンダー:身体的性に関わらず、性自認が男性にも女性にもあてはまらない人

私は、現在、32歳です。
先日、兵庫県から神奈川県に引っ越しをしてきたので今、仕事を探しているところです。
これまでいろいろな仕事をしてきました。
アルバイトも正社員も何社か働いてきましたが、ここ7年くらいは派遣社員として働いています。
仕事内容は、給与計算の補助や、総務一般事務、データ入力など事務系の仕事が中心です。
今後もこれまで同様に派遣社員として働きたいのですが、仕事探しでちょっと困っています。

私はXジェンダーを自認しています。Xジェンダーといってもいろいろな人がいると思うのですが、私の場合は、「男性らしく」というのを求められるのが苦手という感じです。
小さいころも、「男の子らしく」と言われるのは苦手で、かわいらしいものやキラキラしたものとかが好きでした。
今はプライベートでは中性的な服装をして、メイクもしています。
ただ女性ではないので、トイレは誰でもトイレか男性用トイレを使用していますし、見た目も女性という感じではないと思います。

働く上の希望としては、トイレは誰でもトイレがあればそれを使いますが、なければ男性用で全く問題ありません。
ただメンズスーツはできるだけ避けたいのと、髪が比較的、長めなのでそれは維持したいです。
あとは薄くメイクをしているので、それもできるだけ継続したいです。

派遣先を紹介してもらう上では、仕事内容や給与や休みなどの条件面ももちろん大事ですし、同時に、セクシュアリティに関する部分もできるだけ希望を叶えたいと思っています。
派遣会社の担当者には、自分のセクシュアリティについてカミングアウトをしています。
昔は、担当者へのカミングアウトすらちょっと怖かったのですが、何回か転職をしている中で、そこはクリアできるようになりました。

ただ実際に仕事を探してもらう際には、仕事内容や給与などはすぐに検索できるけれど、セクシュアリティの希望に関しては、個別に派遣先に確認をしないとわからないということで、なかなか紹介をしてもらえないというのが実情です。

あとは私の場合は、派遣先ではカミングアウトはしていません。
髪形やメイクがOKの職場でも、一緒に働く人からの目線はやはり気になります。ただそこまでは実際に就業してみないとわからないという感じですね。

正社員での就職の場合は、人事部門と配属先との距離が近ければ、実際に働く環境のこともある程度は、採用時に情報共有することが可能です。
しかし派遣で働く場合には、常用型か登録型かを問わず、派遣会社では派遣先の情報がわからないことが多く、難しさがあります。

トランスジェンダーの方で戸籍の性別と完全に異なる働き方を希望する場合には、事前にしっかり相談が必要になりますが、Nさんのようにそこまで具体的な配慮が必要ではない場合には、カミングアウトの必要性も含めて、ケースバイケースとなることが多いです。

派遣会社も派遣先も、派遣社員の方がしっかり仕事をしてくれることが一番大切だと思いますので、セクシュアリティのことが一番にはならないように、どうするのがよいか、何ができるかを考えることが大切になります。