『素晴らしき、この人生』
ニューハーフタレントのはるな愛さんの自叙伝です。
本書は15年前(2009年)に出版されているので、LGBTやトランスジェンダーに関する社会の理解や課題は現在と全く異なりますが、本書で語られるはるな愛さんの体験は時代に拘らず心に響くものがあります。
トランスジェンダーといっても人それぞれ感じ方も体験も違いますが、多くの人が知っているはるな愛さんの体験を、トランスジェンダー(ニューハーフ)の体験の一つとして読むとトランスジェンダーへの理解が深まるかと思います。
トランスジェンダーという視点は常に出てきますが、それだけでなくはるな愛さんという人の魅力がとても伝わってくる一冊です。
※本書では職業としてだけでなく、トランスジェンダーの意味合いで”ニューハーフ”という用語が使用されております。
書籍概要
テレビでは言えなかった、これが“真実の人生”
はるな愛の波乱万丈に満ちた半生は、これまでも笑いと涙と共にお茶の間に紹介されてきた。
しかし、彼女の人生の凄絶さはとてもテレビで伝えきれるものではない。
この本で初めて語られる、父親の借金と暴力、自殺まで考えたいじめ地獄、14歳で始めたホステス、決死の性転換手術、感動の初体験、サラ金通いの下積み時代……。
あらゆる苦難を乗り越え、夢を叶えた彼女の生き様は、人生の尊さを改めて教えてくれる。
■目次
プロローグ 原体験
第1章 目覚め
第2章 救い
第3章 告白
第4章 再生
第5章 和解
第6章 破局
第7章 どん底
第8章 転機
エピローグ 前進
印象的なコンテンツ
『どっちの人生が私にとって幸せなんやろう。思い切って女性の体を手に入れるか、それとも自分に嘘をつきながら、男性としていきていくか』(P50)
同級生が無邪気に遊んでいる中で、小学4年生のはるな愛さんは、一人きりで自分のこれからの人生について日々悩んでいきます。
自分の境遇や苦悩に重なる部分を感じて、その頃は毎週のように図書館で「人魚姫」の本を読んでいました。
「自分で決めた人生や、男やったら、とことん貫き通して、一番取ってみろ。その代わり言うとくぞ。絶対に後悔だけはするな」(P102)
愛さんは中学生のときからショーパブで、ニューハーフとして働いていました。
高校生のときに学校をさぼってショーパブで働いていることが親にバレたタイミングで、「私は本当は女なんだ」ということを父にカミングアウトをします。
大声で罵倒され暴力を振るわれるかもしれない、という不安を抱えながらカミングアウトをした際の、父の言葉です。
「おばあちゃんが考えていたように成長しなかったかもしれないけれど、私は女になったことが幸せなの。だから許して、ねっ、お願い」(P133)
入院し、意識がもうろうとしている祖母に、“男装”しながら心の中で謝ります。
「番組で、『もう一度、ニューハーフとして生まれたい』と話していたときに、私はとってもうれしかった。自分の生き方に後悔していないのだから、私は肩の荷が下りたような気がしました」(P247)
母からの手紙の一節です。手紙全体から子供を愛するお母さんの想いが伝わってきます。
感じたこと
本書では、店のお客さんの整形外科医に無理に頼み込んで手術をするシーンや、初恋や大人になってからの大恋愛などのシーンもでてきます。
トランスジェンダーとしての悩みや苦労がたくさんでてくるトランスジェンダーの体験談ではあるのですが、読んでいるうちに話に引き込まれ、性別に関係なく”はるな愛”さんという人の人生譚として受け止める読者が多いのではないでしょうか?
読みやすい本ですので一読をおススメします。