Nijiリクルーティングでは2016年の創業以来、多くの就活や転職のサポートをしてきました。
特に就活生の場合は、トランスジェンダーの方の悩み相談が多いという特徴があります。
2016年と比較すると、近年では社会の理解も変わり、企業の取り組みも変化してきています。
それに伴って就活生の困りごとも変化してきているように感じます。
今回は、2025年3月に卒業し新社会人として働き始めるHさんから自分の就活時の体験事例をお聞きしました。
私は大学4年生で、もうすぐ卒業し就職します。
これから就活をする人や採用選考をする人事の方の参考になればと思い、私の就活についてお話いたします。私は、自分がFTMトランスジェンダー(戸籍:女性)だと自認しています。
トランスジェンダーといっても人によって感じ方や治療の状況は違うと思うので、まず私自身についてお話します。私は大学に入ってからトランスジェンダーということをはっきり自覚するようになり、ジェンダークリニックには半年前から通い始めています。
ホルモン治療などはまだ開始していませんが、いずれ手術までしたいと考えています。
外見は、髪は短めで、メイクは一切しません。スカートもはかないです。
友人にはほとんどカミングアウトをしていませんが、男の子っぽいとは思われていると思います。
母にだけは、就活の最中にカミングアウトをしました。就活に関しては、履歴書やES(エントリーシート)の性別欄を前にしたときに、そもそもどういう働き方をしたいかを考えてみました。
就活開始時には、まだジェンダークリニックにも通っていなかったので、“男性として生きる(働く)”ということはあんまり分かっていませんでした。
ただその時に思ったのは、メイクしてヒールを履いて、レディーススーツを着て働くのは無理!ということでした。いろいろな会社の説明会やインターンシップも行きましたが、リモートワークとかがあっても、どこかで女性らしい格好を求められる場面は少なからずあるなということはわかったので、やはり男性として働きたいと思いました。
履歴書やESに関しては、男女のどちらかを選択する方式、その他が選べる会社、性別欄がない会社などいくつかパターンがありましたが、どれもそんなに違いを感じなかったですし、特に困ることもありませんでした。
私の場合は、メンズスーツをきてネクタイを締めても、身長が低く、名前も女の子らしいし、声も高いので、男性と思われることはありません。
なので、面接時にはカミングアウトが必須になるので、履歴書の性別欄がどうであってもあまり変わらないという感じです。むしろ、一番困ったのは、面接にどう臨むか?ということです。
カミングアウトは面接のときにしていいのか?どのように言えば伝わるのか?選考に影響しないか?変だと思われないか?マニュアルも先輩の体験談もほとんどないので、いろいろ思い悩みました。良かったと感じた会社は、働き方についての会社説明の中でLGBTの多様性についても説明があったところです。採用ページにLGBTについて触れている会社はあまりないのですが、そのようなことを少しでも説明してもらえると安心感にはつながりました。
今、振り返ると、就活は会社のことが全然わからないので、とにかく説明がたくさんあると安心するし、相談もしやすくなると思います。
トランスジェンダーの場合は、どんな働き方をするかでカミングアウトをするかどうか、いつするのかなど変わってくると思います。
これから就活をするトランスジェンダーの人の参考になれば嬉しいです。
履歴書の性別欄に関しては、早くから問題点が指摘され、2021年には厚労省は性別欄が任意記載の履歴書の雛形を公表しました。
またその頃から企業でも性別欄を見直す動きが加速しています。
一方で、就活生からは、エントリー時ではなく、次の面接時でのふるまいについての悩みが多くなりました。
Hさんはまだ実感はないかと思いますが、実際には、面接時より入社後の働き方のほうが大変なことが多いです。
履歴書の見直しとあわせて、面接時から入社時、入社後の対応まで一貫して整備できることが望まれます。