『東京サラダボウル』

『クロサギ』などの漫画で有名な黒丸さんによる漫画作品です。
本作は、女性警察官と中国語通訳人を主役として、新宿に暮らす外国人の生きづらさに迫っていく漫画です。
外国人とともに同性愛も大きなテーマとして描かれています。
本ブログでは本作の中でも同性愛についてスポットを当ててご紹介します。

LGBTの話ではトランスジェンダーと比較した場合に、同性愛の生きにくさや働きにくさは分かりにくいといわれることがあります。本作では働きにくさにつながる職場の同僚の言動がいくつもでてきます。
漫画ならではの登場人物の表情や視線なども含めて、生きにくさ働きにくさの世界を感じられるかと思います。全5巻で読みやすいのでとてもおススメです。

書籍概要

東京都の外国人居住者の割合、3.98%。LGBTの割合は8.9%。パーセンテージではたったそれだけ。
でもそれだけの人が確かにここにいるーー。
さまざまな事情で日本にやってきて、犯罪に巻き込まれた、または犯罪を起こしてしまった外国人による事件と向き合う、警視庁 国際捜査係の鴻田麻里と警察通訳人の有木野了。
言葉がわからない国でいきなり逮捕されたらどうしたらいい…!? 自宅で子供が誘拐された…!?
日本でこんな事件が起きているなんて知らなかったーー2人の捜査の中で明らかになる、知られざる日本での国際犯罪の姿と、浮き彫りになる犯罪関係者たちの過酷な現実。
破天荒な女性警察官とゲイの警察通訳人の最強バディによる、これまでにない新たな警察漫画!!

印象的なシーン

『ひょっとして刑事さん、有木野さんの彼女ォー?』
『ちゃんと見てよ、ねえ 美人でしょ しかも看護師だよ!看護師と警察官は相性いいんだからー』
『あーあ うちの同期ナゾだわ なんでこんな女っ気ないんだろ 織田とか有木野くんとか 顔いいのに限ってさ~』
職場の同僚との飲み会の席や、聞き込みの最中に投げかけられた言葉です。
いずれもいわゆる悪気はない発言ですが、日々の積み重ねがマイクロアグレッションにつながります。
有木野の表情が印象的です。

『あー有木野くんは 今交際しているお相手はいるのかねえ 警察にいるなら身を固めるのは早いに越したことはないよ。なんだかんだ評価に影響するからねえー』
有木野が警察官だった時代に、上司に言われた言葉です。
実際にはどれくらい評価に影響があるのでしょうか?民間企業でも結婚をしているかが出世に影響するといわれていた時代はあります。
また名残がないとは言えないです。

『おれは警察でうまくやっていきたかった それなりに出世もしたかったし 自分のような人間には それくらいしか人生の展望がないと思っていたから』
『つまり誰かとおおっぴらに付き合うとか結婚とかそういう人生のステージがおれの人生には見込めないという感覚があったんです』
『でも織田は俺よりずっと軽やかだった 自分のことを理解し受け入れていた』
有木野はゲイというマイノリティ性だけでなく、日本人として日本で生まれたけれど幼少期は中国で過ごしていたこともあり異邦人という感覚が強く、自分の世界がつかめないまま大きくなっています。
ゲイという点では同じでも恋人の織田は、自己肯定感が高く『言いたいヤツには言わせておきゃいいじゃん』と言い切る自信があります。

感じたこと

“男社会”や“男らしさが求められる職場”は、ホモソーシャルな環境という側面が強く表れることがあります。
ホモソーシャルはダイバーシティと対極にあり、今でも多くの職場でホモソーシャルな面が残っています。
本作は、NHKドラマで奈緒さんと松田龍平さんが主役を演じて評判にもなりました。
漫画もドラマもどちらも面白いのでおススメです。