Tokyo Prideは2012年に東京レインボープライドが開催されて以来、コロナによりオンライン開催となった年もありましたが、毎年、日本最大のLGBTイベントとして東京で継続して開催されてきています。
このイベントを大切にしているLGBT当事者もたくさんいます。
今回は、D&I担当者として、職場の仲間と参加したIさん(ゲイ)の体験談をご紹介します。
6月8日、Tokyo Pride 2025に職場の仲間と一緒に参加しました。
社内で有志を募ったところ、最終的に11名が集まりました。
私はゲイ当事者として、そしてD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進室のメンバーとして、この日を迎えることに特別な思いを抱いていました。私が所属するのは、社員500人ほどの上場企業の人事部門。
3年ほど前に社内で人事部の中にD&I推進室が立ち上がり、希望して立ち上げメンバーとして関わることになりました。
あの時、「関わりたい」と手を挙げたのは、きっと自分自身のことを少しでも肯定したかったからだと思います。とはいえ、職場でカミングアウトしているのは、推進室の上司の2人だけです。
それ以外の同僚には、自分がゲイであることは話していません。
今回のような社内イベントとしてのパレード参加には、正直、迷いもありました。
「自分がゲイだとばれてしまうかもしれない」という不安が、ずっと心のどこかにありました。当日は薄曇りで、時おり雲の切れ間から日差しが差し込み、蒸し暑さを感じる天気でした。
私の気持ちも晴れやかに、とはいかず少し重たく、落ち着かないまま集合場所に向かいました。でも、集合場所に11人が自然体で集まり、笑顔で「よろしくお願いします!」と声を掛け合っている様子を見て、少しずつ緊張がほぐれていきました。
レインボーカラーのグッズを手にした仲間たちは、どこか誇らしげでもありました。パレードでは、企業や団体ごとにグループになって歩きました。
沿道からの「ハッピープライド!」の声援に、じわじわと涙がにじみました。なぜか自分が肯定されているような気がして、胸の奥で押し込めていた「見せられない自分」が、そっと認められたような感覚でした。
歩いている途中、隣にいた普段は物静かな経理部のAさんが「こんなにあたたかいイベントなんですね」と話しかけてくれました。
その一言に、なんとも言えない気持ちになりました。
Aさんは、私が当事者だとは知らないと思います。
それでも、彼女が今ここにいて、笑って、歩いてくれている、その事実が、心にしみました。パレードの後は、11人全員で感想を共有しました。
「初めてこういう場に来たけど、すごく元気をもらえました」
「正直、最初はちょっと怖かった。でも、想像していたよりも、温かくて、ポジティブな雰囲気だった」
「なんとなく“自分とは遠い世界”だと思ってたけど、今日来てみて、その考えが変わった」それぞれが、自分なりの言葉で素直な感想を口にしてくれました。
そのひとつひとつが、自分にとって救いのようでもありました。ただ、どこかでずっと「自分の正体が見透かされていないか」という不安がつきまとっていたのも事実です。
自意識過剰かもしれないですが、職場でまだ“自分のすべて”を見せられていないという事実は、無意識の緊張を生みます。
それでも今日、こうして一緒に歩き、笑い、話してくれた仲間たちの存在が、その不安を少しだけ和らげてくれた気がします。「このパレードに、あなたがいたことに意味があるよ」と、D&I推進室の上司がそっと言ってくれた言葉が、心に残っています。
カミングアウトしている人はまだ少ないけれど、確実に会社の空気は少しずつ変わってきている。
Tokyo Prideへの参加は、その変化のひとつのきっかけになったと信じています。
Tokyo Prideに会社のメンバーと参加することで、社員の理解が深まる≒意識が変わることにつながるケースが多くあります。
最初は数人での参加から、年々、参加者を増やしている企業もあります。
Tokyo Prideを社内啓発のきっかけに活用してみてはいかがでしょうか?