ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が叫ばれる中、大手企業を中心にLGBT学生の就職活動に対しての対応が検討されることが増えてきています。
しかし、LGBT学生の就職活動の中でも、面接などの選考とインターンシップでは異なる課題があります。

今回は、LGBT就活生が直面しやすいインターンシップにおける障壁を具体的にご説明し、企業の人事担当者としてどのように対応すべきかを3つの視点から考察します。

1.インターンシップならではの「継続的な関係性」の難しさ
インターンシップは、面接とは異なり数日〜数週間にわたる継続的な関わりが生まれます。
その過程で、以下のような「プライベートへの接近」が発生しやすくなります。

  • 懇親会でのフリートーク
  • 休憩時間の雑談
  • 社員と就活生がペアになる担当制

これらの場面は一見、親睦を深めるポジティブな機会に見えますが、LGBTの就活生にとっては「カミングアウトするか」「話題をどうかわすか」という心理的負担が生じやすくなります。
たとえば、同性パートナーがいる就活生が「彼女(彼氏)いるの?」と聞かれた際、どう答えるかで葛藤を抱えることになります。

2.面接では見えない「物理的・実務的な困難」
面接は通常1時間程度の短時間で、企業との接点も限定的です。
しかし、インターンシップでは実務に近い場面や長時間の行動が求められるため、以下のような課題が顕在化します。

  • トイレの使用問題
    トランスジェンダーの就活生にとって、男女で分かれている職場のトイレは大きな障壁です。どちらのトイレを使っても周囲の視線や反応に不安を抱えるケースが少なくありません。
  • 工場見学や実習などでの着替え
    ユニフォームの着用や更衣室の使用を伴うプログラムでは、身体的性別と性自認の不一致が問題になります。
  • 宿泊を伴うプログラム
    男女別の部屋割りや入浴のタイミングなどで、LGBTの就活生が居心地の悪さや不安を感じることがあります。

3.就活生同士のコミュニケーションのリスク
面接では就活生間の交流は基本的にありませんが、インターンシップでは他の就活生とグループワークや懇親会などで深い関係が生まれる場面があります。
このときに問題となるのが、LGBTに対する就活生同士の無理解や偏見です。

  • 無自覚な差別発言(例:「オカマっぽいよね」「レズってどんな感じ?」)
  • SNSでの噂や暴露、性的指向の詮索
  • カミングアウトをした際の空気の変化

これらは、LGBTの就活生にとって精神的なダメージとなり得ます。また、場合によっては参加辞退や企業への不信感につながるリスクもあります。

 

LGBT学生が就活で直面する困難は、面接などの選考プロセスとインターンシップとでは異なる側面があります。
インターンシップでの困りごとは一見すると見えにくいですが、「誰もが安心して働ける職場環境を、就活段階から提供できているか」を常に考え、想像することが大切になります。