就活生は、内定が決まっても入社までの数か月の期間中に入社後の働き方について不安を感じることがあります。
不安なことがあれば、採用担当者など企業の窓口担当者に質問や相談をすればいいのですが、LGBTの就活生の中には、セクシュアリティに関する疑問については、就活中や内定期間になかなか聞きづらく、不安を抱えたまま入社するというケースもあります。
今回は、来春の入社を控えて、今感じている不安について語ってくれたKさんの事例です。
私は大学4年生の春に、第一志望だった大手企業から内定をいただきました。
長かった就職活動が終わり、ようやく肩の力が抜けた気がしました。
しかし同時に、「この会社で自分らしくいられるのだろうか」という不安が心の奥に残っていました。私はレズビアンです。
恋人やごく親しい友人には話していますが、それ以外の人には伝えていません。
面接でも言っていませんでしたし、言うつもりもありませんでした。
けれど、内定者期間という新しい環境の中で、自分のあり方をどこまで出していくべきかを考えるようになりました。初めて不安を感じたのは、内定者懇親会の席上でした。同じ内定者と話をし、場が和み始めたころに「彼氏いるの?」と聞かれました。
一瞬、答えにつまり「いないです」と笑ってごまかしましたが、心の中はざわついていました。
実際には恋人がいます。でも、それが女性であることを話す勇気はありませんでした。
その人も悪気があって聞いたわけではないと思います。
それでも、あの瞬間、自分だけがその輪の外側に立っているような気がしました。さらに懇親会のあと、内定者同士でLINEグループが作られました。
「インスタ交換しよう」と誘われたとき、少し迷いました。私のアカウントには、恋人との写真がいくつか残っていたからです。
誕生日を祝った時の写真など大切な思い出なのですが、「見られたらどう思われるだろう」と考え、結局いくつか削除しました。
これまで自由に使ってきたSNSが、内定者になった途端に“見られる場所”に変わった気がしました。また会社の紹介動画やパンフレットもあとから見返すと、別の不安を感じました。
社員インタビューでは「家族の支え」「結婚しても働ける環境」といった言葉がたくさん登場していました。
明るい笑顔の社員の姿は素敵でしたが、そこに“自分”がいるイメージを持てませんでした。
「うちは家庭を大切にする会社だよ」と先輩社員が言っていたときも、少し心が揺れました。
その“家庭”の中に、私みたいな同性のパートナーの形は含まれているのでしょうか?
そんな小さな疑問が頭の中に浮かび、しばらく消えませんでした。うちの会社はLGBTの取り組みも積極的に進めていて、「同性パートナー制度」もあります。この制度があること自体はとても心強く感じています。
ただ、同時に「実際に使っている人はいるのだろうか」という疑問もあります。
制度の存在と、使える雰囲気の間には大きな違いがあるのでは、という不安もあります。入社に向けて不安を感じるのは、きっと私だけではないとは思っています。
今、会社の人に質問しても、結局は入社してみないとわからないこともあるとも思います。
入社に向けて、楽しみな気持ちと不安な気持ちが半々です。
Kさんの入社予定の企業は、PRIDE指標も数年連続でゴールドを取得して、LGBTに関するさまざまな制度や啓発活動もしています。
Kさんもそういった表にでている情報は知ってはいるのですが、実際の職場の状況や雰囲気がわからずに不安になっていました。
このような不安はKさんだけでなく他の就活生からも耳にすることはあります。
採用や受け入れ部署のかたはこのような不安を解消できるような、寄り添いや対応ができることが望ましいです。