『Q&A 多様な性トランスジェンダー・包括的性教育』
浅井春夫さん、 遠藤まめたさん、染矢明日香さん、田代美江子さん、松岡宗嗣さんの6人の編著による一冊です。
『バッシングに立ちむかう74問』というサブタイトルの通り、トランスジェンダーバッシングの意図を理解し、そこで生じる差別に抗するために必要な知識を補強するための書籍です。
一問一答形式なので、興味のあるQだけでも十分読めるので、よりトランスジェンダー(バッシング)について知りたいという人にはおすすめです。
書籍概要
トランス排除を煽るネット上のデマや誤解、陰謀論をファクトに基づき検証。
LGBTQへの差別や恐怖を利用し包括的性教育を攻撃する右派のバックラッシュを許さないために、当事者・専門家らが結集したコンパクトなQ&A集。
[目次]
はじめに
1章 LGBTQとは? トランスジェンダーとは?
[コラム]ニュースから読み解く 最近のLGBTQをめぐる社会の変化
2章 トランスジェンダーをめぐるバッシングのウソ・ホント
[コラム]LGBTQグルーミング陰謀論にご注意!
3章 日本の子ども・若者の性はどんな現状にあるの?
[コラム]性教育・性の健康と権利にまつわる施策に若者がかかわる意義とは
4章 包括的性教育って、どんな性教育なの?
[コラム]包括的性教育がもたらす変化と展望──大東学園高校の経験から
5章 世界の流れと日本の動き、これからの課題
印象的なコンテンツ
本書の中でも、職場や企業で働く人に幅広く関係するという意味で、1章と2章からいくつかQAをご紹介します。
『Q6 性的指向や性自認は治せるのですか?
A 性別不合という名称で国際疾病分類に含まれますが、(中略)ホルモン治療や手術などの医療行為を必要とするような人がいるためであり、性自認の持ち方そのものが病理とみなされているわけではありません』(P26)
よくある質問です。
性同一性障害は、その名称や病院を必要とすることが多いために、誤解を招きやすい項目です。“性自認の持ち方”という考え方がポイントです。
『Q11 性同一性障害はトランスジェンダーとはどう違うのですか。
A 性別違和を持つ子どもが学校で通称名を使ったり、希望の性別で過ごせるような合理的配慮を求めたりする際には、医療行為をともなうわけではないので、からなずしも診断書は必要ではありません』(P33)
原則として、ホルモン治療や手術をする場合には、診断書が必要になります。
職場では診断書を求めるべきかは判断が分かれているのが実態ですが、本書では、通称名の使用やトイレなど男女別の設備を使用する際には診断書は必ずしも必要ではないという回答です。
『Q17 トランスジェンダーの人はどのように性別を変えるのですか。
A 社会的な性別移行ができれば、身体的治療をしなくてもよいと考える当事者もいれば、身体的治療が重要であると考える当事者もいて、個人差があります』(P37)
この違いの有無によって、トランスジェンダーも大きく分けて考えることができます。職場での対応という視点でも、大きく異なります。
感じたこと
上記のほかにもトランスジェンダーが女性用スペース(トイレや更衣室、公衆浴場など)を使用することについてのQもあります。
ケースバイケースという考え方に基づいて回答は書かれているので、読者によっては正解が明確でないので物足りなく感じる方もいるかもしれませんが、判断基準の参考を学ぶという意味で役に立つ部分も大きいと思います。
本書は、“トランスジェンダーへのバッシングに立ちむかう”という立場に立脚して書かれているので、読者を選ぶかもしれませんが、包摂的性教育についても多く書かれているので、関心のある方にはおススメです。




