契約企業の概要
Y社は、従業員数およそ1,000名の中堅メーカーです。
首都圏に本社を置き、BtoB向けの製品開発と販売を主力事業としています。
ここ数年は人材確保や企業イメージ向上の一環としてダイバーシティ推進に力を入れており、LGBTに関する社内啓発研修の実施や、社外向けの情報発信にも積極的です。
PRIDE指標も受賞しており、対外的には「LGBTフレンドリーな企業」として一定の評価を得ています。
一方で、現場レベルでの運用や判断については、各部署や管理職の裁量に委ねられている部分も多く、制度と実態の間に差が生じることもあります。
相談内容
ご相談があったAさんはY社で営業職として働く20代後半の男性です。
ご自身はゲイであることを自覚していますが、職場ではカミングアウトをしていません。
仕事自体にはやりがいを感じており、会社がLGBTに関する取り組みを行っている点にも、一定の安心感を持って入社したといいます。
そんなAさんが悩むきっかけとなったのは、「髭を伸ばしたい」という希望を上司に相談したことでした。
Aさんにとって髭は、ゲイとしての自己表現やアイデンティティの一部でもあり、無理のない範囲で整えた上であれば問題ないのではないかと考えていました。
Y社の身だしなみ規程にも、「華美にならず、社会人としてふさわしいこと」という抽象的な表現しかなく、明確に禁止されているわけではありませんでした。
しかし上司から返ってきたのは、「前例がない」「営業としての身だしなみに問題がある」という理由での却下でした。
具体的にどこが問題なのか、どの程度であれば許容されるのかといった説明はなく、「会社としては認められない」という結論だけが伝えられました。
Aさんは強く反論することもできず、その場では引き下がりましたが、心の中では大きな違和感が残りました。
LGBTの取り組みを掲げ、PRIDE指標も受賞している会社であっても、実際には自分の在り方が尊重されていないのではないか?カミングアウトしたら変わるのだろうか?
いろいろ考えると、誰にも相談できず、もやもやした気持ちが募ったものの、上司や人事に知られることへの不安が拭えず、最終的にAさんは社外の相談窓口に連絡をしました。
自分の感じている違和感は大げさなのか、それとも声に出していいものなのか。その答えを探すための相談でした。
弊社の外部相談窓口対応
Aさんには、まず「ゲイであるかどうか」と「髭を認めるかどうか」を切り離して整理することが大切だと説明しました。
Aさんにとっては、ゲイとしてのアイデンティティという気持ちがありましたが、他社の似たような事例においても、“ゲイのアイデンティティだから”という理由で特別に髭を認めるということはあまりなく、理解を得にくいものです。
Aさんの了解を得たうえで、人事部門にはAさんの名前を出さずに、今回の相談を共有しました。
人事部門には、今回の本質は、性的指向ではなく、Y社の営業職として髭が許容されるのかという点であることを強調しました。
「ゲイだから配慮する」という考え方は、一見優しい”配慮”のようでいて、”特別視や線引き”につながる可能性があるためです。
すべての社員に共通する身だしなみの課題として扱うことこそが、真のDEIにつながるという視点を理解していただきました。
あわせて弊社相談窓口からは、身だしなみを過度に社内規程で縛ることは、法律上問題となる可能性がある点もお伝えしました。
明確な業務上の合理性がないまま制限を設けることは、会社側にとってもリスクになり得ます。
その後、Y社では個別対応ではなく、全社的な課題として検討する方針が取られました。
営業職に限らず「身だしなみはどうあるべきか」を議論するプロジェクトチームが立ち上がり、現場の声を集めながら規程の見直しを進める方向で話し合いが進んでいます。
今回は髭以外も含めた身だしなみ規程の見直しなので、Aさん個人にとってだけでなく、職場の同僚のみなさんの働きやすさ(DEI)につながる動きになりました。
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