トランスジェンダーの場合は、自分らしく生きようと思うとカミングアウトが避けられない場面に直面することがあります。今回、ご紹介するAさんはカミングアウトをすることでポジティブに変われたと話していました。
私は、性同一性障害者(FTM)です。
現在は大学に通っており、バイトをしたり遊んだりごく普通の大学生活を送っています。ですがやはり常日頃から考えていること、興味のあることはジェンダー関連、特に性同一性障害の問題についてです。
私は物心がついたころから性別へ違和感を持っていました。なんで自分は女の子なのだろうか、男の子として過ごすことは許されないのだろうか毎日考えていました。
女の子として過ごすことで嫌な思いをたくさんしてきました。制服のスカートや赤いランドル、女子トイレや女子更衣室の使用、男女の席順わけ、さん・ちゃんで呼ばれること、両親など周囲の人から言われる「女の子なんだから~」と女の子らしい振る舞いを求められることなど挙げたらきりがありません。
好きになるのは女の子で、男の子として好きになってほしい、男として扱われたいと日々思っていました。
思うところはたくさんありましたが、きっとおかしいことなんだ、誰かに言っていいことではないんだと何となく思っていたので、誰かにカミングアウトすることもなく、我慢の日々を繰り返していました。
ただ、自分の中だけに留めておくのはとても苦しかったので、高校に入るころから少しずつ仲の良い友達には伝えました。周囲全体に隠さなくなったのは高校3年生の頃です。
男子として扱われたいことはあったけど言わなければ伝わらないですよね。言えない自分が苦しかったです。だからこそ、伝える努力が必要だと感じました。カミングアウトすることはとても怖かったし、勇気のいる行為でした。
幸いなのか、周囲の友達やバイト仲間に偏見や差別のある人は少なく、バイト先では通称名の使用許可していただけて、少し気持ちが軽くなりました。
両親とは、ぶつかる時期もありましたが、時間をかけてお互いの気持ちを理解し、お互いに受け入れて過ごすことができています。
なので、今現在カミングアウトをしてオープンに生きていることに後悔はしていません。
20年の人生の中で、必要に思ったことはカミングアウトのしやすい環境です。自分の想いを伝えられるかどうかでその人の人生は大きく変化すると思います。私自身、オープンにしてからはとても楽になったし、劣等感を感じなくなりました。カミングアウト前まではなんでこんな風に生まれてきたんだとかマイナスなことばかり考えていました。ですが、カミングアウト後からはこの障害あっての今の自分なんだと思えるようになったし、だからこそできることに取り組もうと前を向けるようになりました。
この先まだまだ問題はあると思いますが、一歩ずつ着実にセクシャルマイノリティが当たり前に認められる社会になればよいと思います。
トランスジェンダーに限らないですが、自分のセクシュアリティとどう向き合えるかが大切ということを、Aさんと話していて実感しました。
向き合うときに周り(家族、友人、学校、職場)がどう反応・対応したかも大きな要因になります。カミングアウトは強制するものではないですが、カミングアウトしやすい環境づくりが大切だと思います。