広辞苑第7版にLGBTについての項目が新たに追加されたものの、その説明に誤りがあるという指摘が続出して、結果的に説明を修正するという事態になりました。
修正した解説文をどう考えるか?そもそもLGBTという言葉を広辞苑に収録すること自体はどうなのか?というお話です。
顛末のおさらいです。
今年(2018年)、岩波書店の『広辞苑』が10年ぶりに改訂されました。改定によって新たに1万項目追加されたらしいのですが、その中に『LGBT』という言葉も含まれていました。
当初、LGBT当事者の中では広辞苑に『LGBT』という言葉が追加されるというのをポジティブにとらえる声も多かったです。
でも、実際に発売された広辞苑の『LGBT』の説明は、
【LGBT】
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字。多数派とは異なる性的指向を持つ人々。GLBT
問題になったのは、「多数派とは異なる性的指向をもつ人々」という記述です。トランスジェンダーには「性自認」の概念が含まれるので、これでは「LGB」の説明にしかなっていないという指摘がありました。
この指摘はもっともで、お粗末な説明といわれても仕方がないですね。
その後、広辞苑も誤りを認めて、新しい解説をweb上で掲載し、今後重版する際には修正をするとのことです。
新しい解説がこちら
【LGBT】
①レズビアン・ゲイ・バイセクシャルおよびトランスジェンダーを指す語。GLBT
②広く、性的指向が異性愛でない人々や、性自認が誕生時に付与された性別と異なる人々。
この新しい解説には、広辞苑の“本気”を感じました。
LGBTの定義は世の中にいろいろありますが、『性的少数者(セクシュアルマイノリティ)の総称』という説明をつける定義も数多くあります。歴史的に見ればその説明は適切だと思います。
ただ多数・少数という概念は、他の例を見ても、偏見や差別の対象になりやすいです。
広辞苑の修正版は、単に性自認を付け足しただけでなく、当初あった“多数派”という言葉も削り多数・少数という概念を載せませんでした。これは広辞苑としてのこだわりではないかと感じました。(完全に、個人的な想像ですが)。
もっといえば、そもそも収録する語はLGBTで良かったのかという考えもあります。
LGBTs、LGBTQ、LGBTI、LGBTIAQとかいろいろな言葉があります。LGBTだけではない他のセクシュアリティもある、という考えですね。それには使う人それぞれの想いがつまっています。最近はSOGIやSOGIEという言葉を使うケースもあります。
さらに考えをすすめていくと、セクシュアリティという概念がない社会になればLGBTという言葉もいらなくなるかもしれません。将来、消えゆく言葉であるならLGBT(やその他の言葉)自体を収録しなくても良かったのかもしれません。
おまけ
企業において、LGBTをどう定義するか?という考えは広辞苑とは別でいいと思います。性的少数者(セクシュアルマイノリティ)と認識することで取り組みが進むという一面はあると思います。
定義づけ次第で、本質からずれてしまうこともあります。でも定義づけをすることで理解が進むこともあります。まずは分かりやすい理解から入るということも大切ですね。