『きみは世界でただひとり ~おやこで話す はじめてのLGBTs』
最近は、小中学校でもLGBTに関連する教育が行われたり、制服などでの対応をする学校も増えてきています。そういう中で、「自分の子どもにLGBTについて聞かれたけれど、どう教えたらいいでしょうか?」というような質問を続けてもらいました。
本書は、FTMトランスジェンダーであり、小中学校の教諭をしていた鶴岡そらやすさんが、親子一緒にLGBTについて考えるために書かれた本です。
この本の良いところは、まず読みやすさです。飼い猫のマルと4匹の兄弟が主人公で語りは進行します。そしてテーマごとに子供が喜びそうな楽しいワークがついています。またセクシュアリティの話を前面に押し出すのではなく、多様性をメインにもってきているところも読みやすさにつながっています。
LGBTについて勉強しよう!というよりも、多様性について考えていく中で、自然とLGBTについての理解も深まるという作りになっています。
親子で一緒に読むのはもちろん、企業でも研修やアライコミュニティの活動の中でグループワークとして活用するのも良いかと思います。
書籍概要
・「LGBTって何」?
・「男の人同士、女の人同士で結婚しちゃいけないの」?
・「家族の形って決まっているの」?
子どもたちからこうした質問をされたとき、あなたはどう答えますか?
もし少しで不安があるのだとしたら、本書をきっかけに、子どもたちと一緒に話してみてはいかがでしょうか。
本書の目的は、「からだの性」と「こころの性」について親子で考えていくこと。
一人ひとりがちがうこの世界を、世界に一人しかいない子どもたちが、自分らしさを大切にしながら生きていくために知っておきたいことをまとめました。
猫と妖怪がたくさん出てくる楽しいイラストと、ゲーム、おやこで話すきっかけとなる「しつもん」のほか、大人向けの「解説書」も付いています。
大人と子どもが一緒に考えていくことで、きっと、新たな発見や気づきが生まれることでしょう。そんなやり取りをとおして、子どもたちの「自分らしさ」を磨いていく――本書をとおして、そんな親子のコミュニケーションをしてみませんか?
【目次】
プロローグ 見えている? 見えいてない?
第1章 「みんな」ってだれだろう?
第2章 オス? メス? それとも……?
第3章 男の子だから? 女の子だから? あなただから?
第4章 「みんなと同じところ」はないのかな?
第5章 言われたら「うれしいことば」「かなしいことば」
第6章 きみはだれが好き?
第7章 「けっこん」って何だろう?
第8章 「家族」って何だろう?
第9章 自分にできることはあるかな?
第10章 いろんな人がいる世界
エピローグ 世界に一人のきみとぼく
印象的なコンテンツ
『まわりにいる人と同じところ、ちがうところはどんなところ?』(P41)
ワークの一つです。まさに多様性について、親子(参加者)で考えるテーマになっています。すべての人と違いがあり、同じところがあるのに気づくかと思います。
『みんなちがうってことは、自分の知らないことをほかの人が教えてくれるし、きみも誰かに教えてあげられるということ。ちがう人の数だけ世界が広がるなんて、最高だ』(P91)
エピローグの中にでてくる文章です。
感じたこと
本書には、(別冊)おとなのための解説書というのが付いています。本編を読んだりワークを考えるにあたって、参考となる考え方のヒントや著者の想いがかかれています。
本書は、いわゆるLGBTの“基礎知識”というのはほとんど書かれていません。しかし本書を読み、ワークをしていくと、LGBTというのを変に特別視せず、あたりまえとして受け止められるという理解の仕方につながっていくような気がします。おススメの一冊です。