『LGBTだけじゃない!わたしの性。ジェンダーアイデンティティ』
『LGBTだけじゃない!わたしの性。からだの性』
『LGBTだけじゃない!わたしの性。好きのありかた』
『LGBTだけじゃない!わたしの性。性役割/性別表現』

臨床心理士、公認心理士でGID(性同一性障害)学会の理事をつとめる佐々木掌子さんが監修した4分冊からなるシリーズです。
思春期の子供向けに書かれており、イラストや漫画を採り入れ、とても分かりやすく書かれています。

知識の羅列ではなく、身近な例を出しながら読者に考えることを促すようなスタイルなので、子供向けの本ですが、LGBTに関する知識があまりない人にも良いですし、研修時のグループワークや、社内で作成するLGBT関連の資料にも役立つのでおすすめです。

書籍概要

【目次】
第1章 ジェンダーアイデンティティってなんだろう
第2章 みんなが気持ちよく過ごすために
第3章 性の多様性ってなんだろう

シリーズの他の書籍では
第1章 からだの性ってなんだろう
第1章 好きってなんだろう
第1章 性役割ってなんだろう

各書籍は、第2章、第3章は同じタイトル。※第3章は内容も同一

印象的なコンテンツ

『ジェンダーアイデンティティとは、「自分の性別は同じく“こうだ”とわかっているかどうかについて」をあらわすことば』(P12)
『性自認が時間や場所を超えて統一性・一貫性があるとき「性同一性が安定している」という』(P12)

アイデンティティ(≒自分は自分だとわかっているかどうか)についての説明から入って、性自認と性同一性の違いについても、できるだけ簡単に説明しています。
性自認や性同一性という言葉は、なかなか実感をもって理解しにくい言葉なので、理解するヒントになるかもしれません。

『自分のことをもっと知るために…あなたは「その性別」として、どうありたいか』(P16)「その性別として」というのは、体の性、誰を好きになるか、性役割、性表現なども含めて、いろいろな考え方があります。

ジェンダーアイデンティティに悩んだりしっくりこない人だけでなく、誰もが考えてみることで、自分がどんな人なのかというアイデンティティをより考えるきっかけになるかもしれません。

『みんなが自由に選べる』
『自由に選択できる環境をつくる』(P26)

みんなが気持ちよく過ごすために必要なこととしてこの2つがあげられています。LGBTといってもセクシュアリティや人によって、悩みも希望も違うので、取り組みの正解は一つではなく、できるだけ選択肢が多いほうが良いということをよく言われます。

一方で、選択肢を用意するだけでなく、その選択肢を実際に選べるような環境作りが大切ということが書かれています。

『カミングアウトされたとき』(P32)

企業向けの研修などでも頻出のテーマですが、本書では一番最初の対応として『相手の話をよく聞いて、否定はしないで』とあります。
アウティングをしてはいけないことは、当然、書かれているのですが、アウティングをしてしまった場合、されてしまった場合の対応についても書かれています。

感じたこと

本シリーズはそれぞれ40ページ程度でイラストも多く、また重複しているページも多いので、4冊読んでも一時間もかからないです。

ただ、書いてある内容は本質的なことが多いので、読み物というより考えるための材料として活用するのがおススメです。良書です。