LGBTに関する社会や職場の理解度は大都市圏と地方では差があるのが現実です。
また理解度とは別に、地方では、生活圏が限定的なためバレやすいという生活のしにくさもあります。

今回は、全国展開している大企業の地方支社勤務で、働きにくさを感じて転職にいたったTさん(31歳 ゲイ)のお話です。

私は、先日まで、ある上場企業の仙台支社で働いていました。
生まれも育ちも東北地方で、新卒でこの会社に入社して以来、ずっと仙台にいます。

私は男性同性愛者です。
職場でもプライベートでもオープンにはしていません。
やはり田舎というのもあり、まだ偏見は強いと感じています。

仙台という町は、東北では一番大きな都市ですが、実際にはそれほど大きくはないので、街中で知り合いに会うことはしばしばあります。
休日などに、恋人と飲みに行ったりすることはあるのですが、バレないようにただの友達同士を装うように気を付けて生活をしていました。
しかし、どこかで見られていたのだと思うんですが、職場で「あいつはゲイじゃない?」という噂が知らないうちに広まってしまいました。

最初は、私はその噂を知らなくて、陰で言われていたみたいなのですが、仲の良い同期の女性が「ゲイなんて言われているよ。はっきり否定しておいたほうが良いんじゃない」と教えてくれました。

所作がやや女性らしい感じだったのもあり、中高生の頃から、ゲイっぽいと言われたことがあったので、男同士で飲み屋に行っていただけでも、そんな噂になってしまったのかもしれません。

仕事に直接の影響はないとはいえ、その噂を聞いてしまうと、周りの視線が気になってしまいました。
直接、何か言われたり避けられたりしたわけではないのですが、これもハラスメントになるんでしょうか?

本社では、LGBTQの取り組みもいろいろしていて、ハラスメント窓口もありましたが、いきなり人事の人に相談するというのもハードルが高くて、結局、何もできませんでした。

もともと、キャリアアップも考えていて、東京に行きたいという気持ちも持ってはいたので、このことが後押しになって、転職をすることにしました。

Tさんとしては、周囲の好奇の目も当然気になったのですが、親切心から言ってくれたにせよ同期の女性の発言も気になったし、もっといえば地方の閉鎖的(物理的にも理解度においても)な環境にも嫌気が差したということでした。

Tさんは退職にあたっては、東京で働きたい、としか企業には伝えていないので、職場の周囲の人はともかく、人事としては退職理由がセクシュアリティに関連しているという把握はできていないと思われます。

その後、Tさんから連絡をもらいました。東京に引っ越してきて、無事に就職ができたそうです。給与は少し下がったものの、仕事内容は前職の経験が生かせて新しいことにチャレンジできそうとのことでした。
またセクシュアリティに関しては、職場の様子はまだわからないけれど、街で社内の人に会うことはなさそうなのは、ちょっと気が楽です、と言っていました。