契約企業の概要

全国に拠点を持つ大手企業A社の事例です。
従業員数は数千名規模にのぼり、業界でもトップクラスのシェアを持つ企業ですが、LGBTへの取り組みについては、相談当時(1年前)はまだほとんど手つかずという状況でした。
社員向けのD&I研修やLGBTに関連する制度は整備されておらず、社内に「多様性」や「包摂性」といった価値観が浸透しているとは言い難い状況でした。
そのような中で企業としてD&Iを本格的に推進していく方針がようやく打ち出され、まずは外部相談窓口を設置し、その他の施策の検討が始まったというタイミングでした。

 

相談内容

「会社にはがっかりしました。正直、転職も考えています」
最初のメールはそんな言葉から始まりました。
相談者は入社2年目の社員で、戸籍上女性、バイセクシュアルのIさんです。
新卒でこの企業に入社し、「大手だからこそLGBTに理解があるはず」と期待していたものの、実際には取り組みらしきものは見当たらず、職場でもセクシュアリティに関してはとても理解があるとは思えない状況でした。

「誰にも言えずに隠しているつもりはないけれど、そもそも話す雰囲気もない」「こういう会社が“多様性”をうたっているのは名ばかりなのでは」と、失望の気持ちを抱えながら日々を過ごしていたといいます。
そうした思いが募るなかで「自分らしく働けない職場で、今後も働き続ける意味があるのか」と悩み、転職も現実的な選択肢として考え始めた中で、弊社の外部相談窓口にご連絡をいただきました。

 

弊社の外部相談窓口対応

最初のご相談では、Iさんの感じている職場への違和感や孤立感、不安な気持ちをじっくりお聞きしました。
そのうえで、企業としてはまだ十分な体制が整っていなかったものの、今後の方針としてD&I推進が予定されていること、LGBTに関する制度づくりが進み始めていることをご説明しました。
また、「セクシュアリティはキャリア形成において重要な一要素だが、それだけが理由で転職を決めるのは少しもったいないのではないか」と、丁寧にお伝えしました。
実際に他社でも取り組みに差があること、変化には時間がかかることなども併せて共有し、「会社がどのように変化していくのかを、もう少し見てからでも遅くないのでは」という選択肢をアドバイスしました。

Iさんは「話すことで気持ちが少し落ち着いた」とおっしゃり、その時点では転職をすぐに決断することなく、今の職場でもう少し様子を見てみるという選択をされました。

その後も1年間のうちに2回、追加のご連絡をいただきました。
いずれも、相談というよりも近況報告のようなもので、「最近、社内でLGBTに関する研修が始まりました」「福利厚生にも新しい制度が加わったんですよ」など、前向きな内容が多く、企業としての取り組みにも変化が見え始めている様子がうかがえました。

また、社内コミュニティが立ち上がり、社長からのLGBTに関するメッセージが発信されたこと、社員の間でも「D&I」や「LGBT」という言葉が話題になるようになったという報告もありました。
とはいえ、風土がすぐに変わるわけではなく「まだまだ課題は多いけれど、ちょっとだけ芽が出てきた感じ」と、冷静に現状を見つめる視点も持ち合わせていらっしゃいました。

最後のご相談では、「実は最近、仕事自体が少し面白くなってきたんです」とお話しされ、「いろいろあるけど、もう少しこの会社でやってみようと思います」と前向きな言葉で締めくくられました。

外部相談窓口では、社内制度を整備するなどの環境を変えることはできませんが、悩みを共有し、心を整理する場としての役割を果たすことができます。
職場のだれか一人でも理解があり相談ができるだけで、安心感が違うという声は多く聞きます。
私たちはこれからも、安心して話せる場を提供し、企業と働く人の両方にとってより良い環境づくりをサポートしてまいります。

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