バイセクシュアルの人の働きにくさとはどんなことがあるでしょうか?
異性も恋愛対象となるので異性愛者同士の恋愛の会話にも話を合わせやすいということもあり、同性愛者よりも働きにくさが分かりにくいという声を聞くことがあります。
今回は、バイセクシュアルのAさんが感じる職場での働きにくさの体験談をご紹介します。
私は戸籍上は女性で、バイセクシュアルです。
自分がそうだと気づいたのは、たぶん高校時代。
通っていたのは女子高で、当時付き合っていたのも、ひとつ上の先輩の女性でした。
女子高では、先輩に憧れるとか、「推しの先輩がいる」なんていう話はよくあることだったので、私が先輩と仲良くしていたり、手をつないで歩いていたりしても、誰もそれを「特別なこと」とは思わなかったんじゃないかなと思います。
恋愛の気持ちだったのかどうか、自分でも最初はよくわかっていなかったけれど、その先輩が卒業して遠くに引っ越すと聞いたとき、涙が止まらなくて、「ああ、好きだったんだな」ってはっきり自覚しました。その後、大学では男性と付き合うこともありました。だから自分はバイセクシュアルなんだな、と納得するようになったのはこの頃です。
就職してからは、女性の恋人ができました。今付き合っている彼女は、とても優しくて、私の話をよく聞いてくれる人です。
私は事務職で、職場には女性が多く、恋愛の話はランチタイムの定番ネタになっています。
あるとき、流れで「今、恋人いるの?」と聞かれて、私は「うん、いるよ。彼女」と答えました。
周囲の反応は、「あ、そうなんだ〜」って感じで、特に否定的なものではなかったです。ただ、その後、別の同僚から「あの、もしかして、女の人と付き合ってるの?」と改めて聞かれたり、「女子高だったんだよね?やっぱそういうのって多いの?」なんて聞かれたりすることがありました。
これってアウティングだとは思うのですが、私自身は自分のセクシュアリティをどうしても隠したいと思っていたわけではないので、アウティングされたこと自体には怒りを感じませんでした。
でも、何度も同じようなことを聞かれるのは、正直ちょっと面倒くさい。
「なんで付き合ってる相手の性別だけが、そんなに特別視されるんだろう?」って、不思議に思います。
私にとっては、ただ「好きな人がたまたま女性だった」というだけなのに、そこに興味本位の視線が注がれることが、少しずつストレスになっていきました。もちろん、悪気がないのはわかっています。
ちょっとした好奇心とか、単なる会話の一環として聞いているんだろうなって。でも、「どっちとも付き合えるって、どんな感じ?」とか「どっちが好きなの?」なんて聞かれると、ちょっと疲れてしまう自分がいます。それでも私は、「気にしすぎないようにしよう」と思っています。
自分のことを隠して生きるのも、それはそれでしんどいし、周囲が知ってくれていることで、少しでも生きやすくなる場面もあるかもしれない。
だから、必要以上に自分を守ろうとはしていません。異性愛の方に伝えたいのは、「誰を好きになるか」は人それぞれであって、特別視されたり、興味本位で根掘り葉掘り聞かれたりすると、当事者は疲れてしまうことがあるということです。
恋愛の形が違っても、根っこにある「誰かを大切に想う気持ち」は同じ。そんな当たり前のことが、もっと自然に語られる社会になったらいいなと思っています。
SOGIに関連するハラスメントとしては、アウティングは絶対にさけなければいけないということはよく言われます。
アウティング自体が問題なのですが、より問題なのはその結果として、周囲の人とのコミュニケーションや関係が変化して働きにくくなることです。
人間関係はそれぞれの人の性格や価値観の違いもあるのですが、まずは相手がどんなことを思い、感じるのかを知ったうえで、お互いが安心でき居心地のよい職場づくりができるといいですね。