職場でのカミングアウトにもいろいろな場面があります。
採用面接で面接官にカミングアウトするケース、職場で仲の良い同僚にカミングアウトをするケース、何かしら配慮の希望があり上司に相談するケースなどがあります。

今回は、Nijiリクルーティングで企業向けに研修をした際に、研修の最後にカミングアウトをしたTさん(ゲイ)のお話をご紹介します。

 

先日、職場でのLGBT研修がありました。
研修の最後の質疑応答のところで、自分から手をあげて『実は、私はゲイなんです』とカミングアウトをしました。

職場では誰にもカミングアウトをしていなかったし、この研修の場でカミングアウトをするつもりもありませんでした。
けれど、ディスカッションの時間に「自分の周りには当事者はいないと思うけど、もし相談されたらちゃんと聞きたい」「知らないだけで、案外近くにいるかもしれないですよね」というような同僚の発言を聞いているうちに、少しずつ気持ちが変わっていった気がします。
“この人たちなら話しても大丈夫かもしれない”という思いが起きると同時に、“わかってほしい”という想いが自分の中にずっとあったことにも気づいた気がします。

また今回の研修が「対面」だったことも大きかったと思います。
オンラインとは違って、相手の表情が見えるし、講師も受講者も同じ空間にいて、外の世界から切り離されたような、閉ざされた空気があったので、その安心感が、カミングアウトのハードルを下げてくれたように思います。

あと研修の講師の方の話し方も印象的に感じました。
研修講師はLGBT当事者ではなかったのですが、当事者ではないからこそ、淡々と事実を伝えるように話していて、軽んじるわけではないですが、不必要に感情を込めることはなく、当然、身の回りにもいる当たり前の話という感じで特別視をしていない感じが良かったです。
もし講師が「当事者の皆さんに寄り添っていきましょう!」と力強く言っていたら、きっと私は何も言わなかったと思います。

研修後、何人かの参加者が声をかけてくれました。
「正直、びっくりしたけど、話してくれてありがとう」と言う人もいましたし「研修の中で実際に当事者の声を聞けたのが一番の学びだった」と言う人もいました。

家に帰ってからカミングアウトをしたことを思い出して、今更ですがドキドキしてきました。でもホッとした気持ちも大きかったです。

研修でのカミングアウトは、研修参加者限りとして、それ以外の人にはアウティングをしないように、ということで終わりました。
そのあとは、職場では特にカミングアウトはしていません。
ただ、これからは無理に隠したり、特別に説明したりすることなく、自然体で働きたいとは思っています。

 

LGBT研修中に、受講者からカミングアウトを受けたことは、これまでに何度かあります。
個人的に伝えてくれるケースが多いですが、受講者全員の前でのカミングアウトも何件かあります。
カミングアウトをしても大丈夫!と思えるのはその場の空気感や雰囲気が本人にとって心理的な安全性が担保されていると感じれるからこそです。

LGBT研修で基本的な知識を学ぶことも大切ですが、“気づかなかったけれども身の回りにいる”という体験が、このテーマを身近にとらえ、自分事として考えるきっかけにつながるので、受講者にはとても良い体験になったと思います。