僕は仕事上、日々多くのLGBT当事者の方とお会いしています。ただその中でバイセクシュアルと会う機会は他のセクシュアリティに比べると少ない気がします。

昨月、僕が会ったAさんは女性でバイセクシュアルと自認している27歳。セクシュアリティに関するライフヒストリーを話してくれました。

自認する中学生まで

私がバイセクシュアルを自認したのは、中学1年生のときでした。正確にはもうちょっと遅いかもしれません。

昔から音楽の好きだった私は、中学で吹奏楽部に所属しました。その時に3年生だった女性の先輩に、一目見てすごく惹かれたことを今でも覚えています。楽器も上手できれいで優しいその先輩に、抱いたその気持ちが恋であることはなんとなく理解していました。

当時、マドンナ的存在だったその先輩には、当然のように彼氏がいました。しかも当時は同性愛や両性愛という考えすらなかった私は、先輩にも、友達にもその気持ちは伝えることはありませんでした。今思うと、知ってほしいという想いはあったのかもしれませんが、実際に伝えようとまでは思うことはありませんでした。

恋というもの自体もよくわかっていなかったのかもしれません。まだ子供過ぎたのかもしれません。しかし彼女が、私が恋をした最初の相手でした。

大学から就職まで

中学を卒業してから私は、男性から告白されることもあり、お付き合いしたことも何度かありました。しかし男性とお付き合いをしてみて、先輩に対しての気持ちとは違うということを感じました。

私は地方の田舎で育ったのですが、大学からは、都内で一人暮らしをはじめました。はじめて女性とお付き合いしたのは、大学生になってからです。はじめてのお付き合いは実は、私からではなく相手の女性からの告白でした。バイセクシュアルであることはカミングアウトをしていなかったのですが、ある日、仲の良かった女友達と飲んでいた時に突然告白されました。でもなんとなくお互いに惹かれているのは分かっていたので、すんなり受け入れられました。

現在は、大学時代のサークルで知り合った別の彼女と付き合っています。地元にはそもそも大学すらほとんどないのですが、都内にはたくさんあり、インカレで所属していたLGBTサークルが彼女との出会いでした。お互い社会人になった現在も、交際を続けています。

大学時代には、男性も好きになりお付き合いをしたこともあります。そういう意味では私はバイセクシュアルなんだな、と思います。

地元の私と東京の私

上京してもうしばらく経ちますが、彼女の存在や、所属していたLGBTサークルのことは、親も含めて地元の人にはだれにも言っていません。親戚の集まりで地元へ帰るたびに、結婚や彼氏の有無をしつこくきかれるのは毎回のことです。彼女がいることを伝えたら・・・反応を考えるととても言い出せません。

地元の友人の中には、LGBTに対して偏見のない人もいるかもしれません。しかし、コミュニティがせまいこともあり、私が誰かにカミングアウトしたら、すぐに私の家族にも知れ渡るのは目に見えています。親も友人も地元も大好きですが、この先言うことはないかなと思っています。

Aさんは、プライベートにおいてもほぼカミングアウトをしていません。仕事のうえではなおさらカミングアウトをするという選択肢はないそうです。カミングアウトをしたい!という気持ちが強いわけではないですが、女性と付き合う場合には、周囲に嘘をつかなければいけないこともあるし、現実的に結婚ができないなどの悩みも抱えています。