9月28日放送のフジテレビの『とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念SP』という番組内で、石橋貴明扮する“保毛尾田保毛男”というステレオタイプなゲイ風キャラクターが登場しました。約30年前に人気を博したキャラの復活という設定でした。これにLGBT団体をはじめとして多くの批判が殺到し、フジテレビの社長が謝罪をするという事態になりました。

この件について、いろいろな人に実際に意見や感想を聞いてみました。

“ホモ”という言葉は差別用語だし、今の時代では許されない

セクシュアルマイノリティを嘲笑の対象としている

そもそも面白くない

番組関係者の意識が低すぎる

コントの中のできごとで別に気にならない

LGBT当事者にも、非当事者にもこの番組へ否定的な意見もありましたし、それほど気にしていないという意見もありました。またLGBTだけに限らず、お笑いの対象となるものはいろいろあるのでLGBTに関することだけが批判をされるのもやりすぎ、という意見もありました。

LGBT当事者・非当事者のいずれでも自分の価値観がどうか?ということだけではなく、ほかの人がどう感じるかというのを意識することが大切だと思います。個人の価値観については、いろんな意見があっていいと思います。

そしてこの件の是非や批判とは別に、企業としてLGBTダイバーシティ&インクルージョンを推進するという立場であれば、どう考えるべきでしょうか?今回の件で企業として考えるべきは、個人の価値観は別にしても社長が謝罪をしなければならない事態になったということは、企業としてどこかに問題があったということだと思います。

問題点としては次の2つが挙げられます。

  1. 現場の意識の問題
    30年前はなんにも問題ない表現であっても、今の社会状況では批判を受けるという意識がなかったということです。
  2. 仕組みの問題
    企業では現場ではいろいろな社員がいます。LGBTフレンドリーに取り組んでいる企業であっても大企業であればあるほど、現場への浸透には時間がかかります。だからこそ、意識の問題に頼るのではなく、仕組みとしてチェックする体制が必要です。今回はそれも不十分であったと思われます。自社の商品やサービス、コーポレートサイトでの発信など不適切な発信がないか?ということをチェックする機能も大切です。

さらに、この件を企業としてどう生かしていくか?という方法の一つとして研修テーマとするというのがあります。

先週、ある企業様にお伺いして、今回の件をテーマに1時間の研修(ディスカッション)をしました。30人ほどの参加者のうち、今回の件を知らない人も3割くらいはいました。まずは、こういうことが社会問題になるということ。さらに参加者が自分の価値観や考えを語り、どこが問題なのか?(問題ではないのか?)ということを深堀りする時間になりました。

研修後の参加者の感想は非常に好評でした。テレビのバラエティ番組という身近な話題を通じて、LGBTについて考える機会を持てたこと、自分とは異なるほかの人の意見を聞けたこと、LGBTが身近になったという感想もありました。

今回の件は賛否両論、批判と、批判の批判といろいろありましたが、意識や風土改革につなげる良い機会として活用できるということです。企業としてLGBTダイバーシティ&インクルージョンを推進する立場であれば今回の件をどう活用するか、個人の考えとは別の見方ができるのではないでしょうか?