2018年に入って、『LGBT当事者の社員からカミングアウトがあったのでどう対応したらいいでしょうか?』という相談が急増しています。あまりに相談が多いので、ちょっと整理してみました。

企業の担当者から、社員からのカミングアウトに関して一番相談が多いのはトランスジェンダーへの対応です。FTM、MTFはどちらもありますし、話を伺っているとXジェンダーかな?というものも混ざっていたりします。

※注意
企業の担当者から相談は圧倒的にトランスジェンダーが多いです。でも当社にくるLGBT当事者からの相談で一番多いのはゲイの当事者です。この違いは実は意味が深いんだろうなと思っています。話が散らかってしまうので、これについては今回は割愛です。

トランスジェンダーの当事者への対応方法はいくつかのパターンがあります。どう対応するかは企業のLGBT全体のポリシーが関係しますが、ここではダイバシティ&インクルージョンを目的としている企業を前提にします。

対応方法の一つに、部署異動というのがあります。

トランスジェンダーの当事者が望むものは、基本的に自分の自認する性別での取り扱いです。具体的にはトイレや服装(更衣)、名前などいろいろありますが、それは人によって違います。
企業としては、これらの要望をなんとか叶えられないかと考えて、部署を異動するというものです。

多くの場合は、そこまで企業が対応してくれることに対して、好意的・感謝の気持ちをもつ当事者が多いと感じています。

ただ、実際に起きている事例をみていると、この部署異動という対応は、良い面・悪い面の両方があり、難しさがあるなぁと感じます。
良い面は、本人の希望がかなえられやすい⇒結果として本人の仕事のモチベーションがあがり生産性があがるということが挙げられます。

でも残念ながら悪い面もあります。悪い面というかうまくいかない場合といったほうが適切かもしれません。

  1. キャリアの阻害・・・キャリア(仕事内容)の観点からは、本人は異動を望んでいないケースがあります。
  2. 無理な配属・・・企業にとっても、この異動は最適ではない可能性もあります。多くがもともとあった異動ではなく、特別に配慮した異動ですので、組織全体の仕事のバランスや人員配置を考えた場合に無理が生じる可能性があります。
  3. 周囲からの理解が得られない①・・・社内の異動の場合は多くが新部署でも本人のことを知っている人がいるケースがあります。その場合性別が変わるということに周囲が戸惑うことがあるのは一般的です。
  4. 周囲からの理解が得られない②・・・異動自体が周囲から見ると、このLGBT当事者だけがえこ贔屓されている、とみられるケースもあります。
  5. パス度の認識の違い・・・本人と周囲でパス度の認識が違うと、本人は異動に納得がいかないケースもあります。

多くの場合、本人からカミングアウトがあった場合には、人事部(orダイバーシティ担当)と本人が直接話し合いをもって進めていきますが、本人は本心を明かせず当社みたいな第三者に相談がくるケースも実際にあります。特に上記の1と5はなかなか伝えられないというのが現実かなと思っています。

では、企業はどうすればいいのか?

異動を考える場合には、現実的にはケースバイケースで対応するしかないです。ただそのケースバイケースを考えるための原則・ポリシーを持っておくことが大切です。基本的にはLGBTとかセクシュアリティとかはその人の個性としたうえで、そのAさんがもっとも仕事で輝ける部署はどこか?という一般的な人事異動と同じ基準で考えればいいです。

難しいのはその個性であるセクシュアリティの希望や悩みというのが分かりにくいor評価しにくいので、その理解度合い次第で、本人と企業の間にズレが生じることがあるということです。
あと、周囲の理解。これは企業風土・文化の問題なのでそれも込みでAさんの適切な配置を考えるというのも大切になります。

おまけ。

社員の中のLGBT当事者にどう対応するか?人事部(企業)が考えなければいけない、とても重要な観点が他にもあります。今回すべては書ききれないので、またの機会に。