アウティングはなぜいけないのでしょうか?同性愛嫌悪に基づく発言はなぜいけないのでしょうか?
分かっているようでなかなか答えにくい問いだと思います。
この答えは、本書(『同性婚 だれもが自由に結婚する権利』)の中にあります。

同性パートナーシップを導入している自治体の人口はすでに500万人を超え、来年には1000万人に達するかもしれないといわれています。

日本では同性婚は法的には認められていませんが、同性婚の法制化を求めて日弁連の人権救済の申し立てを行った人権救済弁護団が編集している書籍になります。弁護士編集なので、しっかりした内容になっていますが、弁護士という響きとは違って非常に読みやすく書かれています。

書籍概要

目次

PART1 悩み・孤立・生きづらさ  私たちが同性婚を求めるのはなぜか
PART2 なぜ、差別や偏見があるのだろうか?「同性愛嫌悪」の根底にあるもの
PART3 同性カップルを取り巻く不利益  かくも不平等な法律、制度、ルール
PART4 憲法や法律は同性婚をどうとらえているか「憲法で禁じられている」の誤り
PART5 世界に広がる同性婚 日本との違いはどこにあるのか

人権救済の申し立てに関しては、全国455人のLGBT当事者が申し立てを行っています。

PART1では、このLGBT当事者の声を幅広く載せているので、導入部分としてとても読みやすく、LGBT当事者の声を知ることができます。

PART4では、同性婚というものに対して、憲法や法律の解釈が書かれています。「同性婚は憲法上禁止されていない」というだけでなく「同性婚を認めないことは憲法違反」という主張まで分かりやすく書かれています。

また同性婚の議論の中では子供を生み育てるという観点からの賛否もあります。これに対しても、ひとつずつ説明がされています。

印象的なテーマ

PART2では、なぜ差別はいけないんだろう?として法律から差別というのを紐解いて解説しています。

アウティングはなぜいけないのか?同性愛嫌悪に基づく発言はなぜいけないのか?いわれた当事者が傷つくから、というだけではなく、プライバシーの侵害という人格権の侵害にあたるということになるそうです。

法律的にどんな権利を侵害しているのかが分かりやすく書かれています。

世界の先進国の中では同性婚を認めていない日本はマイノリティになっていますが、PART5では世界の動きと、日本との違いについてまとめられています。

「諸外国で同性婚が成立していて、日本では成立していないから、『日本が遅れている』と結論付けるのは慎重にならなければなりません」という記述があります。

歴史的に同性愛を禁止する法律が日本にはなかったからこそ、同性婚の成立までのステップがわかりにくくなっているそうです。

感じたこと

同性婚に対する賛否は分かれている状況です。というよりは論点が明確になった議論はなされていない気もします。

個人としていろいろな意見を持つ人がいるのは当然として、企業として、人事担当者としては法律や社会状況を考えたうえで、ちゃんと説明できるようにしておくことが大切かと思います。

そんなときに参考になる一冊です。