契約企業の概要

全国に拠点がある大手企業。PRIDE指標を受賞するなどLGBTフレンドリー企業としての取り組みを進めているが、社内でトランスジェンダーのカミングアウト事例はない。

LGBT研修、社内の相談窓口(LGBT専用ではない)、同性パートナーシップ制度あり。

相談内容

~Aさん28歳。FTMトランスジェンダーの事例~

最初は社内の相談窓口への相談。
『私はFTMトランスジェンダーです。来年、性別移行手術を受けることを考えていますが、それに関して会社は理解してもらえますでしょうか?』というメールが社内の相談窓口に届きました。

その後のやり取りで、28歳ですでにホルモン治療を開始していて、胸オペまでは完了しているという状況でした。社内の相談窓口としては、会社として理解をする旨を伝えて&Aさんの要望を聞いたものの、Aさんの治療の状況とそれに伴う要望などについて知識が不十分なまま対応を継続するのはリスクがあるとの判断で弊社に相談が転送されてきました。

弊社の外部相談窓口

改めてAさんと連絡をとり、電話での面談をしました。

Aさんは地方拠点で働く28歳の営業職社員。仕事場では女性として働いています。ホルモン治療を2年ほど継続しており、現在はやや中性的な容姿とのことです。このまま女性として働くことは無理がでてくるのではないかという点を悩んでいました。

同時に1年以内に手術をしたいと考えているけれど、その際に、1か月程度の休みがとれるのか、また手術が終わって戸籍変更したら男性として働くことが可能のかを知りたい。

もし難しそうなら、転職も考えないといけないという状況でした。

会社としての対応を検討

まず『性別移行を理解してもらえるか?』というAさんの要望を具体的に整理しました。Aさんが望むことは、

・性別移行をしたい
・この会社で働き続けたい

そのためには、男性として働くこと(服装やトイレ、通称名の使用など)を会社は認めてくれるのか?また周りの人は理解してくれるか?同時に、手術の休みがもらえるか?

という点でした。

現状、社内でトランスジェンダーとしてカミングアウトしている社員はいないため、社内に明確なマニュアルやルールはない状態で、Aさんにどういう対応ができるかを検討しました。

Aさんはここまで個人が特定できる情報は明確にしていないので、あくまで一般論としての対応になります。

・Aさんに関して、企業としてはできるだけの対応はしたいという方針。

・男性としての勤務は制度上は可能。ただし現場の理解度合いは分からない。営業職としては移行の状況やパス度も関係するので、仕事内容なども含めて都度相談したい。

・手術に関する休みは制度としては現状ない。ただし傷病休暇を拡大解釈しての対応は可能ではないか。今後人事部で検討する。

・職場全体の理解を深めるために改めて管理職にLGBT研修の実施(昨年に引き続き2回目実施)。Eラーニングはすでに予定済み。

上記の事項を本人に伝えた。

Aさんとしては、会社の対応にはとても感謝していて、なんとかこのままこの企業で働きたいという意思があります。ただもう少し職場の様子や自分自身の移行の状況をみて、まずは男性として働きたいというタイミングで人事にはカミングアウトをするということになりました。

企業としては、今回の件を踏まえて、性別移行に関する対応マニュアルを整備していくということになりました。