先日、あるお店の店長(Aさん)と話をしました。その店長Aさんと話をしていて、改めてLGBTアライとは何かについて考えてみました。

その店はチェーンではないですが、一般的な居酒屋です。知り合いのFTMトランスジェンダー(Bさん)が『自分の働いている店に来てください』というので行ってきました。店長さんはLGBT当事者ではありませんが、店には、僕が行ったときにBさんの他にもトランスジェンダーの方が働いていました。

店長Aさんは話してみると、気さくないい人なんですが、自分の店のスタッフがトランスジェンダーであるとかLGBTであるとか、あんまりはっきり分かっていませんでした。
そんなにそこに関心がないというのが正確かもしれません。

店長に話を聞いてみると、トランスジェンダーという言葉も聞いたことはあるものの、性自認がどうとかというのはよく分かっていません。ただ『これまでBみたいなのはたくさん働いていたよ』と言っていました。この居酒屋はスタッフの更衣室は男女別ですがトイレは男女共用です。店長Aさんに聞くと、『更衣室はこっちを使いたいとかいろいろ希望はあるけど、それはそのとき本人と話をして、どうするか決めている』と言っていました。
店長Aさん曰く『BはBだから。明るくしっかり働いてくれれば男でも女でも関係ない』とのことでした。

“男でも女でも”という言い方も、じゃあ中性や両性などはどうなのか?など厳密にはツッコミどころはあると思うのですが、大切なことは、ここにはLGBT当事者にとって働きやすい職場環境があるということです。この店長Aさんの性格や考え方が働きやすさをつくっていると感じました。

先日、企業のLGBT取り組みを評価する指標である『PRIDE指標』の発表がありました。2018年は前年より50社近く応募企業数が増えて、全体で153社の応募がありました。それだけLGBTに理解のあるフレンドリーな企業が増えてきているということだ思います。

LGBT当事者が働きやすい職場づくりには、『制度』と『風土』の両輪が大切だと言われています。その中でも風土をつくっていくためにはアライが増えていくことが必要だと考えられています。

ではアライとは何でしょうか?

アライとはLGBTを理解し支援する人と言われることが多いです。理解者・支援者とはどういう人を指すのでしょうか?

先ほどの店長Aさんは、いわゆるLGBTの基礎知識はそれほどありません。FTMとかMTFとかの言葉も知りませんでした。ただ店長Aさんは、スタッフ一人一人と向き合い、その要望や価値観を尊重しているのです。

アライの考え方についてはいろいろありますが、一番大切なことは相手と向き合い、相手の価値観を尊重することだと考えています。それに伴って必要な知識を身につけたり、目に見える形の行動をどうとっていくかは、その次にくることかなと思います。

企業として、自社でLGBT取り組みを進めるうえでアライの認定であったり、テストをするケースもあります。自社のアライマークをつけるには、一定の基準をクリアしてほしいということです。
知識の多寡を問うて、認定をするというのは分かります。特に企業としてはそういうアプローチもありだと思いますし、それで関心が高まるのなら良いと思います。

ただ知識の多寡や行動量はアライの必要条件ではないのかもしれません。

アライというのは非当事者だけのものでもありません。LGBT当事者自身もLGBTアライかどうかというのはあると思います。相手の価値観を尊重するという意識や考え方は、他人がランク付けしたり認定されたりするものではないのでしょう。

アライとは相手の価値観を尊重する姿勢をもっていること。

LGBTダイバーシティ&インクルージョンを進めれば、LGBTだけでなく他のD&Iが進む効果があるという意見もあります。その通りだと思います。相手の価値観を尊重する姿勢は、LGBTに限らずすべての人に対して大切な姿勢であり、だからこそすべての人が働きやすい職場環境づくりにつながるのだと思います。