Hさんは27歳のMTFトランスジェンダーです。最近でこそLGBTやトランスジェンダーという言葉がひろまり、社会的な認知度も上がってきていますが、Hさんが小さい頃はまったく違う状況でした。

そんな中で自分らしく生きて、自分らしく働いているHさんのお話をご紹介します。

私が自分の性別に違和感を感じたのは小学校の低学年のときです。もともと女の子用のおもちゃなどで遊ぶことも多く、自分の中では自然に女の子という意識になっていきました。もちろん、周りは男の子として扱っていたと思うんですが、自分の中では「私は女だよ」と思っていました。

中学校にあがると、男女の制服があったのですが、私は当然、女子の制服を着たいと思いました。そこでまず親に話をしたところ、普段から女の子っぽかったのもあり親は自然に受け入れてくれていました。次に、中学の先生に相談し、最後は校長先生に自分で話をして女子の制服を認めてもらいました。学校の友達、特に女子は同じ女子として一緒に仲間にいれてくれました。修学旅行とかも女子のグループにはいって一緒に楽しみました。

高校も大学もMTFとしてというより女子として過ごしていきました。中にはいろいろいう人もいましたが、そういう人のことはあまり気にしないようにしていました。

学生時代に手術をすべて済ませました。戸籍は変わっていないので就活では人事部にはカミングアウトをしましたが、身長がわりと小さく女性としてのパス度もわりと高かったので、職場では特にカミングアウトをすることなく女性として働いています。

職場ではLGBTの取り組みとか理解とは別にそれほど求めてはいません。どこにいってもいろんな人はいるし、それはセクシュアリティマイノリティに対するものに限らず、差別や排除しようという気持ちの人もいると思います。ちゃんと自分を理解してくれる仲間を増やして、自分で自分の環境をつくっていけばいいと思っています。

一方で、大人になってほかのトランスジェンダーの人とも出会い、話を聞いてみると私の場合は、友達とか先生とか親に恵まれていたんだとも気づきました。
自分がどうありたいかを大切にしていくことは一番大切だと思っていますが、それを支えてくれる人が周りにいてくれることもとても大きいと思いますし、周りの人にはとても感謝しています。

Hさんと話していて感じたのは、Hさんはとても自己受容ができているということです。LGBTとかマイノリティとかとは関係なく、自信のある人、ない人はいますが、Hさんは自信があるように見えました。

Hさんのように自信のある人は、自分で選び取っているので仕事も前向きに取り組みとても楽しそうでした。
Hさんにトランスジェンダーとしてつらかったことや悩みを聞いてみたのですが、「何もないです!」という答えでした。