LGBTの中でもトランスジェンダー当事者は就職に苦労することが多いといわれます。その人の移行状況やカミングアウトも含めた希望事項によっても異なりますが、自認する性別のトイレ、服装、更衣室の利用などのハード面での対応が必要になるケースがあることが大きな要因です。

そんなトランスジェンダーが就職するということに関して、最近、実際にあった誤解を3つ紹介します。

 

誤解1
先日、ある企業(A社)から、「LGBTの採用」について教えてほしいという問い合わせがあったので訪問してきました。実はこのA社は約1年前にも訪問して、人事部長とお話をしていました。1年前に訪問したときには人事部長は「私は特に偏見もないし全然かまわないのですが、うちの社長(60代)はたぶんなかなか理解できないと思うんです。特にトランスジェンダーとかは難しい気がします」と話していました。

しかし、最近、ふとした話の中で、社長から「うちはLGBTの取り組みとかどうなっている?」と聞かれたのがきっかけでした。人事部長が社長とよく話をしてみると、実は社長には以前からトランスジェンダーの知り合いがいて、トランスジェンダーにもLGBTにも全く偏見がなかったそうです。

 

誤解2
最近FTMトランスジェンダー(Sさん)が入社したB社の話です。Sさんは戸籍変更前ですがパス度が高く、採用面接時にカミングアウトがあったから人事部としては把握しているけれど、「せっかくパス度も高いし、言わなければ周りにはわからない」ということで、Sさんのセクシュアリティに関しては部外秘という扱いにしていました。

ところが実際に入社したSさんは、入社初日に同じ部署の人にもFTMトランスジェンダーであることをカミングアウトしていました。Sさんも入社にあたってカミングアウトをしたいということをちゃんと人事部に伝えておけばよかったことですし、アウティングをしないように部外秘にした人事部の判断は正しいのですが、それとは別の話で「Sさんは周りに知られたくないのでは?という思い込みが自分にはあった」と、採用担当者は話していました。

 

誤解3
クライアント先に社員を常駐させるタイプの事業をしているIT企業C社では、社内的にはLGBTに全く偏見もなく、オープンにしている当事者もいました。ただクライアントはいわゆる“お堅い系”の企業なので特にトランスジェンダーに関しては派遣できないとしていました。

ところがあるとき、派遣されていた社員が、ずっと一緒に仕事をしているクライアント先の社員がトランスジェンダーであるということを知りました(LGBT関連イベントで偶然に会った)。そこでよくよく聞いてみるとクライアント先はお堅い系にみられるけれど、トランスジェンダーも含めてほかにもLGBT当事者が働いているとのことでした。

ほかのクライアントでも聞いてみると、トランスジェンダーも含めてLGBTを受けいれるのは全く問題ないという企業がいくつもありました。

 

いかがでしょうか?
僕が日々、LGBTに関わる仕事をしていて感じるのは、“先入観”が本当に多いなぁということです。なんで先入観が多いのか?LGBTに関する知識不足もあるかもしれませんが、それよりも、LGBTという話題に関してあまり触れてはいけない(≒嫌がる人がいる)と思っているからな気がします。

もちろん、世の中にはイヤだと思う人もいます。ただそう思わない人、気にしない人、前向きな人などいろんな人がいます。みんながアライシールでもつけていれば分かりやすいのですが。。。なかなかそうもいかないですよね。

でも、「きっと〇〇だろう!」って思っても、それは自分の先入観かもしれません。自分が思っている以上に、本人も周りの人も受け入れる人が多いかもしれません。もっとLGBT当事者もまた自分の周りの人とも、LGBTについて話してみると違ったものが発見できることがあると思います。