『青のフラッグ』。友情あり、恋愛ありの漫画の王道をいくような高校生の青春漫画です。

高校時代ならではの、まっすぐさ、危うさ、繊細さなどが描かれており、そこにLGBT要素が含まれてきます。

LGBT関連の漫画としては、もっともおススメできる漫画の一冊です。

この漫画の最大の魅力は自分の先入観に向き合えることだと思います。

だから、この漫画を先入観を持たないで100%愉しむためには、ネタバレを含む以下の記事を読まずに、『青のフラッグ』本編を先に読むことを強くお勧めします!

書籍概要

主人公は4人の高校生。太一は帰宅部で非リア。自分に自信のない高校生活を送っています。二葉は消極的でおっちょこちょいの性格。トーマは野球部で主将をつとめスポーツもできてみんなの人気者。真澄は運動神経もよく成績もよい冷静な女子。この4人を軸に友情と恋愛の話が展開します。

漫画のタッチ、構成力なども評価が高いですが、なによりキャラクターの個性がたっておりいきいきと感じられるところが最大の魅力です。

主人公の4人以外にも重要で魅力的なキャラが何人もいます。そんなキャラのセリフが、また非常に印象的なのでご紹介します。

印象的なシーン

『嫌わないでほしい、好きにならないでほしい、友達でいてほしい、それだけなのに』『自分が好きでもない格好をした、言葉遣いも悪くして女友達以外にはそっけなくもふるまった』(第33話)

これは男の子と友達になりたいと思っている女の子のセリフです。興味がある人と友達になりたい!と思っても、それが男女の場合だと、周りからも相手からも友達ではなく恋愛関係として見られ、結果的に友達を失っていくことに憤りと疑問の声をあげます。

『その秘密はあなたの罪でも弱点でもないのよ、私もね親友にだって家族にだって夫にだって言っていないことたくさんあるわよ、誰だってそんなもんだって、しょうがないじゃない、好きになっちゃうんだものー、犯罪を行わなければどんな感情も自由よー』(第39話)

同性愛という人に言えない“秘密”を抱えている当事者の悩みに対して、このようなセリフで返すシーンがあります。このシーンは当事者ならでは苦しみや悩みの表現であると同時に、カミングアウトされた非当事者の考え方も興味深いです。

『都合のいいとこだけ男女同じにしろ、都合悪くなりゃ男女でわけろ、オレはそんな器用なことできねーから、オレにとって女はそれだけで特別だし違うからこそ女を好きになる、男同士でとか意味がわかんねえー』(第44話)

ゲイの主人公の友人のセリフです。この友人も自分が培ってきた価値観を揺さぶられて悩んでいきます。

感じたこと

LGBT当事者が抱える、“隠さなければいけない”という葛藤が丁寧に描かれています。同時にセクシュアリティという秘密を知った周りの人の反応がそれぞれで興味深いです、実際の生活の中ではこのようなさまざまな反応があります。

特に家族や、親友など近しい関係であればあるほど、感情は複雑になっていきます。

LGBT当事者の間でも、登場人物の気持ちに共感できる!と評判ですが、当事者でなくても、非当事者の立場で共感できる!という人もたくさんいます。

むしろ、LGBT当事者か否か、男か女かというような線を自然に引いてしまっている自分に気づかされる漫画です。

LGBTというテーマも大きなネタばれになっているのですが、それを知っていても、清々しさと同時に考えさせられ、続きが気になる漫画です。現在、単行本は6巻まで刊行され、続きはウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』で絶賛配信中です!