LGBT取り組みをすすめる企業は確実に、急速に増えてきてはいます。ただその取り組みの進捗スピードは企業によってさまざまです。
進捗スピードに影響をするのが、取り組み目的と費用対効果の測定の考え方です。
LGBT取り組みを進めるにあたって目的を明確にすることはとても大切です。何のためにLGBT取り組みを推進するのかがあいまいなままだと、取り組む項目やそのスピード感、優先順位などの判断がブレてしまいやすくなります。
いろいろな企業と話をしていて、LGBT取り組みを進める目的は大きく4つに分けられるかと思います。
ダイバーシティ&インクルージョン
企業ではたらく社員の多様性を尊重し一緒に働くことで、誰もが働きやすく、個人がもっている能力を発揮できる組織風土を醸成し、企業価値を向上させるという考え方
人権・CSR
LGBT当事者がかかえる不利益や差別を人権問題としてとらえ、CSRとあわせて企業として取り組みが必要とする考え方
コンプライアンス
人権・CSRにも近いですが、各種、法律、条令、通達などに定められているハラスメント防止や採用時の差別禁止などに抵触しないようにしようという考え方
マーケティング
顧客にいるであろうLGBT当事者を対象として、商品やサービスを開発しようという考え方
このうち、人権やコンプライアンスという視点でLGBT取り組みをするのであれば、費用対効果という話にはならないでしょう。
経営者が人権やコンプライアンスということを重視しているか次第で、スピードは変わってはきますが、取り組みとしては最低限をやっていくという比較的消極的な取り組みになりやすい傾向があります。
特に、LGBTに関しては、よく比較される女性活躍や障害者雇用とは異なり、法的に数値化されたルールなどはないので、後回しとなりやすいです。
(これはダイバーシティ&インクルージョンよりも、コンプラという観点のほうがなじみやすいと思います)
マーケティングは、商品・サービスを開発するという点では積極的に費用対効果の世界に入っています。実際に、この分野で費用対効果を検討し、商品サービスとして成功を収めているケースはまだかなり少ないと思います。
では、LGBT取り組みを進める目的としてもっとも多い(と思われる)ダイバーシティ&インクルージョンはどうでしょうか?
ダイバーシティ&インクルージョンを目的とした場合には、費用対効果の測定というのが非常に難しくなります。これはLGBTに限らず、ダイバーシティ全体で言えることです。
LGBT取り組みを渋る理由の一つとして、『うちの会社には、LGBT当事者はいない(とても少ない)』という意見があります。これなども費用対効果の話ですね。
社風をつくる、人材開発などは、そもそも費用対効果を図るべきものではないのかもしれません。世の中のほぼすべての企業が、企業理念や行動指針などをつくっていて、これを積極的に組織・社員に浸透を図っていますが、これなども同様に費用対効果で測定は難しいです。
ダイバーシティ&インクルージョンを目的としていながら、LGBT取り組みの進み方が早い企業は、経営者自身が、数値化はできないものの“効果がある”と信じているケースが多いです。
また採用という視点で切り取ると、費用対効果の測定が部分的には可能になりえます。実際にLGBT取り組みを進めていく中で、当事者からの応募があり、何人も採用を実現しているケースはあります。
LGBT取り組みを進める目的を、4つに区別して説明をしましたが、実際にこれらの目的は、必ずしも明確に分かれるものではなく、また目的は一つではなく複数であることも一般的です。
どうやったら、スピードがあがるのか?取り組みが進むのか?
企業の経営者の考え方にも大きく影響されますが、目的を明確化してそれに沿った進め方をすることが大切だと思います。
(取り組みは早さだけでなく、深さも大切です。深さの話は、また改めて整理してお送りします!)