LGBT当事者が働きやすいようにと、いろいろな制度や設備を整える企業が年々増えてきています。実際に多く実施されている制度としては、研修、eラーニング、同性パートナーシップ制度、LGBT(アライ)コミュニティなどがあります。また企業によってはビルや工場などの建て替えにあわせて、誰でもトイレや更衣室を新設するケースもあります。
一方で、このような取り組みをしても実際に活用されているケースは非常に少ないのが現状です。同性パートナーシップ制度を導入している従業員規模が数千人単位の企業であっても、活用は数組に留まるケースは多く、まったく利用されていなことも多々あります。
なぜこのようにLGBTに関する諸制度の活用が低いのでしょうか?
その理由を考えるために、Nijiリクルーティングにきた相談者へのヒアリングを継続的に行ってきました。また先日、LGBT当事者6名とディスカッションをしました。テーマはズバリ『どうしたら制度を活用したくなるか?』。
ディスカッションに参加した6名の勤務先企業の業界はバラバラですがいずれもPRIDE指標を受賞している企業です。6名の年齢は20-30代で社内では(人事部などに)カミングアウトをしている人は1名です。セクシュアリティはバラバラです。
今回話題に上がった企業はいずれもPRIDE指標を受賞しているので、制度面では一通りそろっている企業がほとんどです。参加者たちはみな人事関係者ではないので、制度の活用度合いを明確には把握できてはいませんが、それでも活用事例は少ないという印象を持っています。実際に活用しているという人も参加者の中では1名だけです。
すべての参加者が、自社でやっている制度や取り組みに関しては概ねポジティブな意見でした。それなのになぜ活用しないのか?自社の現場レベルでのリアルな話もたくさんでてきました。でてきた意見としては下記のようなものが多くありました。
- 同性パートナーシップ制度はあるけとパートナーの証明のレベルが高くて使えない
- 同性パートナーシップ制度を使う時には上司に申請なので難しい
- 人事部だけに言うのでも、アウティングの不安がある
- 同性パートナーシップ制度を申請しても手当も別にないのでそもそもメリットが少ない
- パートナーがいないので、使いようがない
- 誰でもトイレはあるけど、ビルの1階だけで、使いにくい
- eラーニングはやっているけど、現場の理解度はぜんぜんない
- うちの上司は、自分の部署にはLGBTはいない、って言いきってた
- 社内の相談窓口に相談しても、あまり効果がなさそう
これらの声を整理すると、LGBT制度を活用されていない理由は次の3つに大別できるかと思います。
- 制度(設備)の設計上の問題で使いたくても使えない(使いにくい)
- そもそも『あったらいいな』という程度でそれほどニーズが高くない
- アウティングが心配≒周りの理解がない
LGBTダイバーシティ&インクルージョンを進めるうえでは、制度と風土の両輪が大切です。その意味では、制度面の取り組みは進んでいるけれど、風土面が進まないためにバランスがわるく、結果的に活用されていないとも言えるでしょう。
では、風土面を進める(LGBTへの理解がある職場の雰囲気づくり)ためには何が必要でしょうか?
女性活躍においても、男女雇用機会均等法が制定されたのが1986年。それから30年以上経った現在では、当時と比べれば女性活躍は進んでいますし、職場の風土も変わっています。ただそれでも女性活躍推進法という法律があり、法律で女性の活躍を後押しをしないといけない状況です。
風土つくりの方法はいろいろありますが、いずれにしても地道で時間がかかることです。だからこそ、企業として地道で時間がかかることに取り組むための、“目的やメリット”が大切になります。
・・・いろんな意見がでましたが、最終的にギュッとすると、このような結論になりました。