『LGBTと家族のコトバ』
他のLGBT当事者はどんなことを考え、どんな体験をして、どんなカミングアウトをして、周りの人とどんな関係性を今築いているのか?LGBT当事者にとってはロールモデルを見つけられる一冊になっています。
LGBT当事者の家族もどのように対応してよいか悩むというケースも多くありますが、本書ではLGBT当事者だけでなく、その周りの家族(アライ)の人のインタビューを掲載しています。
LGBT当事者の話を聞く機会は徐々に増えてきていますが、その周囲の人(アライ)の話を聞く機会はまだまだ少ないです。カミングアウトを受けてどのように対応していいかわからないという人にもおすすめの一冊です。
書籍概要
LGBTとアライのインタビューwebメディア「LGBTER(エルジービーター)」が2015年8月に誕生しました。現在では300名違いLGBT当事者のインタビューが掲載されています。
本書はその中の9人のインタビューを取り上げています。
印象的なコンテンツ
第一章は、『娘が息子に(妹が弟に)なった家族』というタイトルで、トランスジェンダーFTMの本人のインタビューに加えて、両親、お兄さんの3人がそれぞれの立場でインタビューに答えています。本人とのやり取りだけでなく、家族それぞれのバックグラウンドにも触れています。
『思いがけない娘の告白と否定する心。なぜ自分の人生に性同一性障害という話題が入ってきてしまったのだろう。なぜこの子が私の子なんだろう・・・』(15ページ)
『今さらだけど、やっぱり女だったよって言ってくれないかなと思うことも、たまにありますよ』(23ページ)
『同じように葛藤を抱えている親御さんがいたら、話を聞いてあげたいと思う』(24ページ)
これはお母さんの言葉です。娘から性同一性障害を打ち明けられて戸惑う様子、お父さんにも支えられながら、“ある出来事”をきっかけに性同一性障害という事実を受けいれられるようになります。改名にあたってはお母さんが新しい名前を考えています。喜びもあるけれど、それだけではない複雑な心情も吐露しています。
『娘としか思っていないから、性同一性障害なんてまったく意識しなかったです。ただ、今振り返ると、男の子としてみたら自然なことばかりだったなって。』(29ページ)
『娘はきっと病気だから、いつか治ると思っていたんです。このまま男になるなんて少しも思わなかった』(31ページ)
『どんな時でも、子どもの背中にがんばれと声をかけるのが父親の役目だと、自分で自分に言い聞かせていました』(32ページ)
『今は、男性も女性も関係ないと思っている。人と接する時に、相手の本質を見ることの大切さも学んだ』(35ページ)
これはお父さんの言葉です。お母さん同様に、カミングアウトをされて受け入れていく過程では動揺や悩みをもありましたが、それを乗り越えて前向きにとらえられるようになっていきます。
感じたこと
本書のメインは、LGBT当事者が自分で語るライフヒストリーです。これを読むことで自分と同じ境遇の人や、場合によってはロールモデルがみつかる当事者もいると思います。
またLGBT当事者が実際にどのような体験をしてきたか、悩んでいたことやカミングアウトについて知りたいという方にもおすすめです。