NijiリクルーティングではLGBT当事者の就活・転職のサポートをしています。そのため日々、採用活動中の企業と直接お話をしています。
LGBTの採用に関しては、LGBTという属性をもって不採用とすることは認められておりません。厚生労働省が出している『公正な採用選考の基本』という通知があります。これには、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性能力のみを基準とすることが大切であり、さらに『障害者、難病のある方、LGBT等性的マイノリティの方(性的指向及び性自認に基づく差別)など特定の人を排除しないことが必要』と明記されております。
しかし、現実にはLGBTの採用はできないと明確に言われることも少なくないです。
それでは企業がLGBT採用をしない理由にはどんなものがあるでしょうか?
今回は、最近あった『LGBTは採用しない!事例』をご紹介します。
事例1 A社:採用しない理由『前にゲイの社員がいたけれど、遅刻が多くてLGBTに良い印象がない』
社員数100名ほどの専門者の事例です。社風的には仕事ができればセクシュアリティは気にしないという要素が強く比較的オープンな雰囲気です。この企業で数年前に採用した人が入社後に職場内でゲイをカミングアウトをして働いていたのですが、仕事の成果の前にとにかく遅刻が多く、結果的に一年もしないうちに実質的に退職勧奨をして辞めてもらったとのこと。人事担当者としては、『LGBTとかセクシュアリティに差別はないですが、やっぱり前にいたゲイの人の印象が強いので、LGBTの人の採用は難しいです』といわれました。
このように、過去に在籍していた人の印象をもってLGBTの採用NGという企業は意外に多いです。冷静に考えればゲイ=遅刻が多い、とはならないのはわかりそうですが、ゲイの当事者をあまり知らないと、このように何でもセクシュアリティに結び付ける事例は多いです。逆に、活躍しているLGBTがいると、一例をもって同じセクシュアリティの当事者を採用したいといわれるケースもあり、それにも戸惑いを覚えます。
事例2 B社:採用しない理由『まだ早い』
これはある東証一部上場企業で言われたLGBTを採用しない理由です。B社に限らず非常によく聞く理由です。具体的になぜ早いと思うのかということを聞いてみました。トイレなどの設備面が整備されていない、採用するなら本人がイヤな思いをしないように研修などをしっかりやりたい、古い会社だから理解のない管理職もたくさんいる、というようなお話でした。これらの理由にも一理はありますが、一方ですべてが100点満点で完成している企業などほとんどないですし、また就職を考えているLGBT当事者の中でも希望するレベル感はさまざまです。仮に完成度が10点であっても他の条件も考慮して入りたいという人もいるので、一律で門を閉じると結果的にLGBT当事者にとっては選択肢が狭まるだけになってしまいます。
事例3 C社:採用しない理由『LGBの採用自体は問題ないけど、トランスジェンダーはちょっと難しい』
C社は不動産業界で社員数500名ほどの会社です。メインの仕事が営業職ということもあり、LGBといった性的指向の人であれば採用に問題ないけれど、ただトランスジェンダーの人はお客様対応があるので難しいとのことでした。
確かにトランスジェンダーは性別移行に絡んでパス度も変化していくので、その過程でお客様から何か言われることはあります。またトランスジェンダーのご本人もそれを気にして自ら現職企業に相談をせずに転職をしてしまうケースもあります。
しかし、トランスジェンダーといってもいろんな人がいます。とてもパス度が高い人もいれば、移行前で戸籍性で働きたいという人もいます。トランスジェンダーという属性でもってすべてをNGとするのは採用の幅を減らしてしまうことにつながっています。
LGBTを採用しない事例を3つご紹介しました。LGBTを全く採用対象としない企業もあれば、選考はするけれど選考ハードルが高くなる企業もあります。
NijiリクルーティングではLGBTの求職者の就職支援をしています。“LGBT”という属性を理由として採用するかしないかは正しいかどうかというよりは、各企業の考え方次第です。
今回は3つの採用しない理由の事例をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
全体的にみれば圧倒的に多くの企業がこのような理由でLGBT採用を見送っているのが実態です。逆に言えば、このような理由が問題にならない、メリットのほうが大きい、ある程度までなら対応可能ということであれば、その企業は人材戦略において優位な立場にたてることになります。
少しずつですがそこを意識してLGBT採用を行っている企業が増えてきています。自社の採用に生かしてみてはいかがでしょうか?