契約企業の概要

全国に拠点がある大手上場企業。PRIDE指標は取得していないものの、社内ではダイバーシティ&インクルージョンの一環として、LGBTに関連する取り組みを進めている。

具体的に実施している取り組みとしては、経営者からのダイバーシティ宣言、人事向け研修、管理職向け研修、e-ラーニングの実施、LGBT専用外部相談窓口の設置。

相談内容

『僕は新卒でこの会社に入社して今は32歳です。これまで営業職として数年ごとに転勤をしており、今は3つ目の新潟営業所で勤務しています。

仕事内容自体は、自分に合っていると思うし、成果もそれなりに出せています。待遇面も人間関係も特に不満はありません。

ただ私はゲイなのですが、それについてちょっと悩んでいます。社内では特に仲の良い人2,3人にはカミングアウトをしていますが、基本的には他の人には言っていません。社風的にはさばさばしているところもあるので、そんなに結婚のことなども聞かれたりはしないので、そういう意味での働きにくさはないのですが、転勤が困っています。

特に新潟にきてからなのですが、なかなか出会える場が少ないと感じています。今は、パートナーがいないのですが、できれば良い人と付き合いたいとも思います。ただどうしても出会える場がないと厳しいのが現実なので、本当は東京か名古屋とかで働きたいと思っています。

もちろん、入社するときから全国転勤があることは分かっていたので、それを選んだのは自分だから仕方ないのですが、どうしたらいいでしょうか?』

とのことでした。

弊社の外部相談窓口対応

相談者とよく話をしてみると、“出会いの場が少ない”という理由で転職を拒むのは自分のわがままだし無理なことなので、転職をするしかないかな、と半ば諦めている感じでした。

ただ実際に、このような悩みを抱えている当事者の方は少なくないです。異性愛の人であれば、友人知人、職場などいろいろな場所で出会いの可能性があるのに対して、同性愛の人の場合は、性的指向をオープンにできないことも相まって、出会える確率がかなり低くなるということがあります。

相談者自身は、仕事も好きで継続して働きたいという想いがあったので、それを踏まえて企業のダイバーシティ推進担当に報告の上、企業としての対応を確認するということにしました。

LGBTフレンドリー企業としての企業対応

今回の相談に関して、新潟営業所ということを伝えると個人が特定される可能性があったので、地方の営業所で勤務しているゲイの方のご相談として報告しました。

人事部内ではいろいろな意見がでました。

・出会いというのは、かなりプライベートなことなのでそれを理由に人事異動を考えることは難しい
・どうしても転勤が嫌であれば、給与などは下がるけれど地域限定社員にコース変更をすることが可能
・ただし同性愛が禁止の外国への赴任や出張であれば、考慮は可能

このような意見が多く出たそうです。

しかし、最終的には人事部長の判断で次のようになりました。

『企業としてLGBT取り組みをスタートしたところであり、すべての社員が一人ひとりの個性にあわせて力を発揮して事業に貢献してほしいと考えています。その中で今回、勇気をもって声をあげてくれたこともあるので、ちゃんと名前を出して要望を伝えてもらえれば、私が人事部長の間は考慮をします』

これを相談者に伝えたところ、とても喜んでいました。もちろん会社の制度として保障されているわけではないので、人事部長が異動したらどうなるかはわからないという不安があるのですが、結局、人事部長と直接話をしました。

このような話は絶対の正解はないですし、企業として、また人事部長としてのスタンスなどにより判断も異なると思います。制度でない不安定さもあれば、柔軟な対応をできる強さもあるのかもしれません。この人事部長の判断により、相談者は今、東京での勤務で活躍しているそうです。