LGBTの人口は5~10%と言われ、一説にはLGBT市場は約6兆円とも言われています。またLGBT取り組みを考える企業の中ではマーケティング観点で取り組みを始めている企業もあります。

今回はLGBTマーケティングというものを考えてみました。

まず6兆円の消費というのはかなりの規模になるのですが、これはLGBTの消費規模であってLGBTの市場規模とは異なります。つまりLGBT当事者が消費(購入)するものを集計したところ6兆円になるということであって、LGBTという個性に対して消費(購入)されるものはそのうちのごくわずかと考えるのが妥当です。例えば、自動販売機で缶コーヒーを買ったり、通勤するときに電車に乗ったりするのは、LGBTであるかどうかには関係しない消費であり6兆円の中にはこういうものも含まれるということです。

実際にLGBTマーケティングの成功事例はかなり少ないと感じています。純粋に損益だけで判断した場合には、単発のイベントや限られた規模の商品やサービスは存在しますが、規模の大きな商品・サービスというのは難しさがあります。

難しい理由のひとつは、“LGBT”というくくり方の問題があります。LGBT(+それ以外のセクシュアルマイノリティ)を一括りにして考えても、なかなかニーズに関しての共通点が見出しにくいです。ゲイとレズビアンではやはり消費行動は違いますし、トランスジェンダーでもFTMとMTFではかなり違うでしょう。

LGBTを一括りにするのを止めて、個別にセクシュアリティを分解して考えてみると、人口比5~10%という規模自体が小さくなってしまうと状況になります。

またLGBTは可処分所得が高いという説があります。確かにゲイカップルの場合は比較的年収が高く、また子供がいないことが多いので可処分所得が高いケースもあるかと思います。一方で、家族などの扶養の必要性がないから、そんなに高い収入が得られない仕事でもやりがいや働きやすい環境の仕事がいいと考える方も少なくないです。さらにゲイ以外のセクシュアリティに関しては、そもそも可処分所得が高いという説もあまり聞いたことがないので、一括りに『LGBTは可処分所得が高い』というのは、やや言い過ぎという感じもします。

LGBTマーケティングを考えるうえでは、B2CやB2B2Cという形のサービスが一般的に対象になります。消費者(お客様)がLGBTかどうかで違いが出やすい商品やサービスとしては次の3つの特徴があります。

  1. 異性愛が前提のもの
  2. 男女で区分されているもの
  3. 深い人間関係を築くもの

1の事例としては、ホテル予約に関して男性二人がダブルの部屋を予約したときにホテル側が気を利かせてツインに変更したら、実はゲイで敢えてダブルの部屋を予約していた、というようなものが該当します。

2の事例としては女性専用のスポーツジムなどが該当します。トランスジェンダーの場合に利用できるのかどうか、ということが問題になりやすいです。

3の事例としては常連客なども該当します。美容室を多店舗展開しているある企業では、お客様と話す時間も長く継続的な関係になるので、セクシュアリティに関することも含めてプライベートなこともいろいろ聞く機会があるそうです。

このような上記の1~3に該当する商品やサービスで、現在取り込めていないLGBTに関連する潜在的ニーズを掘り起こすことができれば、ビジネスが成立する可能性があります。

ウェディング業界なども、いち早くLGBTマーケティングに目をむけ取り組みを始めております。ウェディングに関しては同性愛の当事者としてはハードルが高いのは事実です。そもそもウェディングということを考えもしないという当事者カップルも多くいます。一つの式場という形だとできることも限定的になりますが、大々的なプロモーションをすることで、これまでウェディングを考えていなかったLGBT当事者に、新しい幸せの形を提案することができ、win-winの関係をつくれる可能性もあります。

このような積極的なLGBTマーケティングではなくても、LGBT当事者から選ばれなくなるのを避けるという考え方もあります。

6兆円のマーケットと考えるのはちょっと違うかもしれませんが、自社のサービスの中でLGBTというのを意識してみてはいかがでしょうか?