LGBTの就活生、特にトランスジェンダー当事者にとって履歴書の性別欄の書き方は悩みやすいポイントです。それに対して、近年では履歴書やES(エントリーシート)上で性別欄に男女以外に「その他」という選択肢を設けたり、そもそも性別欄を削除するという対応をする企業も増えてきています。
そんな中で、履歴書(ES)から性別欄がなくなったことで困ったという就活生の話をご紹介します。
私は、今3年生で、2021年卒業予定です。昨年の夏からインターンシップなどにも参加して就活を進めています。
私は、戸籍上は女性ですが、性自認は男性のFTMトランスジェンダーになります。まだ診断書をもらっただけで何も治療はしていませんが、大学ではメンズの服装をして、周りの友達にもカミングアウトをして男性として生活しています。見た目も、だいたい男性にみられることが多いかと思います就活に関しては、就職した後にも男性として働きたいと思っているので、就活用にメンズスーツも揃えました。応募も昨年の終わりから始めているのですが、実際に履歴書やエントリーシートで応募する際に、自分のセクシュアリティに関してどう説明するかは正直、結構迷います。
戸籍の性別と違う形で働きたいので、どこかでは絶対カミングアウトをしないといけないとはわかっているのですが、カミングアウトをしたことで内定取り消しになったという先輩の話も聞いていたので、どのタイミングでどんな風に伝えるのがいいのか、悩みはあります。先日、応募した企業では、エントリーシートに性別欄がなかったので、メンズスーツで撮った写真を貼って応募しました。一次面接にはメンズスーツをきていったのですが、面接官は私がトランスジェンダーであることは全く気付かずに面接は終了しました。二次面接でも気づかれずに選考が進みました。三次面接は人事部長とのことだったので、さすがに言わないといけないと思い、三次面接の最後の質問時間に、トランスジェンダーであることをカミングアウトしたところ、面接が終了して数日してから、改めて人事の人に呼ばれて、採用が難しいといわれました。理由としては、セクシュアリティに関して差別をするわけではないけれど、今の職場の理解度合いでは、入社しても私が大変になるだろうから、ということでした。
エントリーシートに性別欄がなく、ホームページにもLGBT取り組みみたいなことが書いてあったので、ある程度安心をしていたのですが、結果的にはダメでした。
トランスジェンダーの就活生と話をしていると、履歴書やエントリーシートで性別欄があると戸籍性で書くべきか、自認する性別を書くべきか悩むという相談を聞くことが多いです。この企業の場合は、親会社がPRIDE指標も受賞している上場会社で、グループとしてLGBTに取り組むという一環で、エントリーシートの性別欄を削除したようです。
ただ、就活生の側からすると、性別欄がなくなったことでカミングアウトをするきっかけがなく、結果的には選考の時間をかけただけで、セクシュアリティが理由で不合格という事態になりました。
履歴書やエントリーシートの性別欄をなくしたほうがいいというのは、一般論ではよく耳にしますが、本質的には性別欄の話ではなく、働きやすい環境があるかどうかが大切です。取り組みはできるところからやる!というのも大切ですが、形式的な部分だけを先行するのではなく、実態面の取り組みもあわせて進めることが大切です。